□第九夜 銀幕のファンファーレ
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9-1 聖戦の真実(1/4)

 
「“ルーチェモン”……!?」

 期せずして声を揃えた私とインプモンに、賢者・ワイズモンはこくりと頷いてみせた。私たちは思わず顔を見合わせ、眉間に深いしわを寄せる。インプモンは賢者に詰め寄るように手元の本を目線の高さまで上げて、

「魔王の役目がルーチェモンの封印って、そのルーチェモンこそ魔王だろう?」
「それに、魔王って天使たちの敵なんでしょう? だったら何で……」

 インプモンに次いで私。口々に問えば賢者は落ち着きたまえとでも言わんばかりにそっと手を挙げて、その視線が静かに私とインプモンを撫でる。

「光の化身にして闇の王。光と闇を統べる魔王・ルーチェモンが生まれたのは、新生十闘士との戦いの折だ。古代十闘士との戦いにおけるルーチェモンは、闇の側面を持たない純粋な光の天使だった」
「……何の話だ?」
「“真の闇”の話さ。古代十闘士に敗れダークエリアに封印されたルーチェモンは、その深淵に“闇”を見た」

 それが何処で生まれ、何時からそこに在ったのか、それが何者なのかは誰にも分からない。と、賢者は続ける。

「あるいは“黙示録の怪物”に列なるものか……いずれにせよ推測の域は出ないがね」

 そう語る賢者に、インプモンが少し苛立ったような声を上げる。気持ちは分からなくもないのだが。

「さっぱり話が見えてこねえ。解るように話せよ」
「失敬。つまりはその“闇”こそがルーチェモンを、ひいては君たちを魔王たらしめた始まりだということだ」
「その“闇”を七つに分けたのが七大魔王なんでしょう?」
「そうであるとも言えるが、そうでないとも言える」

 首を傾げて問い返す私に、賢者は小さく首を振る。

「ルーチェモンは“闇”のすべてをこの世に解き放った。七つに分かつことなどせず、ありのままに」

 それこそが“傲慢”の王たる由縁。自らを絶対者と信じて疑わず、他者の手を借りることなど決してない。

「ダークエリアの深淵に在って“闇”とルーチェモンは一つとなった。元来自我など持たないそれはルーチェモンそのものになったのだ。そうして“闇”はルーチェモンとともに地上へと現れ出る――はずだった」
「はずだった……って?」
「“闇”が七つに分かたれたのは地上への進出を果たした、正にその時。ルーチェモンの復活を手引きした“裏切りの天使”の手によって」

 彼方の空を仰いで、賢者は語る。
 
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