□第八夜 金色のアポカリプス
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8-2 金色の追憶(2/4)

 
「白い炎に、霧……やはりそうか」

 語り終えたインプモンを静かに一瞥し、ふむと一度だけ唸ると賢者・ワイズモンは誰にともなく呟くように言う。

「やはりって、何か知ってんのかお前」
「目星はついていたよ。あれだけの天使や聖獣たちを動かせるものは限られているからね」

 賢者はそこで一息を吐き、空を仰ぐ。そうしてしばし、再びインプモンへと視線を移した。

「不意を突いたとはいえ、そうも容易く魔王を無力化する手並み。話に聞く能力や勢力を慮るに、恐らくは――」

 遠く、地響きがした。賢者は一拍だけを置いて息を呑み、その名を口にする。

「“ホーリードラモン”」

 と、ぴくりとインプモンの眉が揺れる。小さな舌打ち、インプモンもまた空を仰ぐ。

「四大竜……か」
「そう。すなわち神なる獣の長にして空の王者――四大竜が一角たる聖竜王。三大天使亡き後、神の隊列をアポカリプス・チャイルドとして再編成し統率できるものなど、四聖獣と同等の力を持つホーリードラモン以外に考えられない」

 そう、語る賢者にインプモンは難しい顔で大きな溜息を一つ。ホーリードラモン……それが奴らの黒幕、魔王を封じた張本人というわけか。しかし、

「ええと……ねえ、ちょっといい?」

 考え込むように黙り込んだインプモンと賢者に私がそう声を掛ければ、二人の視線が同時に私へと向く。空気を読まなくて申し訳ないのだが、

「その、四大竜……とか、四聖獣だっけ? どのくらい凄いのかイマイチよくわからないんだけど……」

 ここまで来て話に置いていかれるのは、どうにもいい気がしない。私がしゃしゃり出るとしかし、賢者はそれもそうだと言わんばかりにふむと唸り、そして語り出す。

「デジタルワールドの創世期、世界が世界としてようやく形になった頃。この世界は一度滅びかけた。生けとし生けるものの敵、魔王が可愛く思えるほどの怪物の手によってね」
「怪物?」
「黙示録の怪物と呼ばれるが、正体はいまだもって謎だらけだ」

 賢者は溜息を一つ。

「その怪物を退けたのが太古の英雄・四聖獣。時に一部のデジモンたちから神の如く崇められる四方の王だ」
「神……」
「四大竜は、そんな四聖獣と同等の力を持つと言われる四柱の竜の王だよ。四聖獣の中には四大竜にも同時に名を連ねるものもいる」

 そこまで言うと賢者はまた一息。ふと、空を仰ぐ。
 
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