□第七夜 灰燼のフロンティア
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7-3 灰色の戦場(2/4)

 
 灰に濁る空のその彼方より、風を切り裂き飛来する敵影に、アポカリプス・チャイルドの飛行部隊は迎撃の構えを取る。予測よりも早いがここは既に敵地。手荒な歓迎は当然――ただ予想外と言えば一つ。

「ぐるるぅおおおぉぉーーっ!!」

 予想を裏切る歓迎ぶりは、為す術もないほどに、部隊はその身を次々に塵へと変えてゆく。後に残るはその荒々しき雄叫びの余韻。嗚呼、よもや誰が想定しえようか。開戦早々、御大将自ら最前線で単騎駆けなど、奇策とも呼べぬ愚行を。
 灰色の空を我が物顔で翔ける闇の竜・ダークドラモンの一挙一動に破壊と殺戮が追従し、規律立っていた編隊はもはや見る影もなく、さながら烏合の衆。

「やってくれる……!」

 舌打ち。眼光鋭く、噴き上がる怒火を具現するような黄金の炎を纏い、巨鳥が混乱の渦を掻き分け飛翔する。狙い定めるはただ一点。

「やれやれ、ようやく――」

 迫り来る脅威に巨鳥の標的たるそれ、ダークドラモンは雑兵を薙ぎ払うその手を止め、宙に留まり右腕の槍を静かに構える。そうして、刹那。

「お出ましか!」

 竜の槍と巨鳥の爪が火花を散らし、甲高い金属音が大気を揺らす。

「会いたかったぜぇ、クロスモン。ちぃっと遊んでもらおうか?」
「相変わらずふざけたことを……っ! 舐めるな!」

 交える槍と爪。一、二、三撃と秒の間の攻防。巨鳥はちらりと横手を一瞥し、かと思えば後退するように後方へ距離を取る。すかさず追い縋る竜。その追撃を寸でのところで避け、またも後退。――嗚呼、分かっている。分かっているが、やはり、

「つまらんな」
「……何?」

 随分と距離の空いた編隊を一瞥、竜は溜息とともに吐き捨てる。

「心配せずとも通してやるさ、お望み通りな」
「っ! 貴様……!」

 目には目を。指揮官である自らを囮に仲間を進撃させる。そんな思惑はとうに見透かして、それでもなお竜は不気味に笑う。巨鳥は舌打ちを一つ。

「パロットモン! 指揮を取れ!」

 互いが互いの指揮官を封じる。元よりそれが狙いか。いいだろう、乗ってやるともその愚策。巨鳥の言葉に待ち侘びたとばかり深緑の翼のデジモンが雄叫びを上げ、再び統率を取り戻した部隊は竜と巨鳥の横合いを構わず進撃する。そんな様子に竜は慌てる風もなく、

「さあ、パーティーを始めようか……ミスター?」

 そう、不敵に笑うばかり。
 
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