□第六夜 青銅のリベリオン
6ページ/12ページ

6-3 鏡像の魔王(1/3)

 
「ようこそマドモアゼル」

 そう言って闇の竜・ダークドラモンはぺこりと馬鹿丁寧な礼をする。礼儀正しい、というよりはどこかおどけた風に。

「ど、どうも」

 地上に降り立ち、礼を返す。見上げたその巨体は建物で言えば優に三階には届こうか。私は思わず後退るも、お構いなしに重低音は頭上から降り、

「俺はダークドラモン。“ゼブルナイツ”のリーダー。の、代理だ」
「ゼブル……代理?」
「まあ、詳しい話は後だ。まずはアジトへ案内しよう。スカルサタモン、デスメラモン、ここは頼んだぞ」

 首を傾げる私に、竜はくっくと人の悪い笑み浮かべ、こちらの返答も待たず踵を返す。後ろで見送るように赤い骸骨と青い怪人が頷いた。
 何だこれ。私たちのことを知ってる? 信用していいのだろうか?
 傍らのレイヴモンに視線をやれば言葉なくただ頷いて。……ああ、もう!

「どうした? 来ないのか?」
「い、行きます、から。レイヴモン!」

 がしがしと頭をかき、半ば吐き捨てるようにそう言って。もういいや。考えても仕様がない。レイヴモンに再度抱えられ、私は竜の後を追った。

 そうして、僅かも行かぬ内。

 竜が降り立ったのは相変わらず何もない灰色の荒野。ここがアジト? キョロキョロと辺りを見渡す、と、不意に地面が鳴動し、かと思えば蟻地獄のように灰が沈み、地面が割れ、ぽっかりと大きな穴が現れる。成る程、地下か。

 竜に続き、深い穴の底へと降りてゆく。よくよく見ると円周には螺旋階段。翼を持たぬデジモンたちのためのものだろう。竜のような大型のデジモンが飛んで出入りするために中心の吹き抜けは非常に大きく、比例して長くなった階段は徒歩で上り下りするには骨が折れそうだった。

 深さにして地下十数階、と言ったところか。穴の円周より一回り大きな広間に降り立つ。頭上でごごごと重い音が響き、出入り口が再び閉じられる。

「先の軍は様子見のようなものだ。その内あれの数倍の規模の本隊がやって来る」

 ぽつりぽつりと松明の点る薄暗い廊下を、竜に先導されながら進む。程なくして、大きな扉の前で立ち止まり、振り向きもせず竜が言う。

「できるなら本人に直接、と思ったが……時間がない。それに、物は試しだ」

 そんな竜の言葉には相も変わらず疑問しかない。そして漏れ出す冷気とともに開かれた扉の奥、姿を表したそれにもまた――
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ