□第五夜 赤枯のジャーニー
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5-3 枯野の行軍(2/4)
朽ちた木にそっと手を触れる。途端にそれは脆くも崩れ、灰となって枯れた地に散る。
「こんな所に……?」
見渡す大地は灰色で、見上げた空もまた灰色。とても生き物が棲める環境には思えないけれど。誰にともなく問えばレイヴモンが頷いて、
「どうやら近隣のレイヤを転々としているようで。ここへは数日程前から」
なるほど。拠点を移しながら天使たちと戦っているのか。と、なるとしかし、
「疑問が二つあるんだけど」
「は、なんなりと」
私はレイヴモンに向かって指を二つ立てる。一つ目は……いや、今更という気もするのだが。
「これから会いに行くならずものって、結局なんなの?」
最初に聞いた印象では盗賊紛いの連中が一方的に喧嘩を売っているのかと思ったが、拠点を転々としているということはつまり、襲い来る天使たちを迎え撃っているということではないのか。ただのならずもの、では納得できないけれど。
「さて……某も詳しいことは」
レイヴモンはふむと唸って思考するように手を口元に……まただ、ほんの一瞬だけど、その口端が笑みの形に歪む。
やはり何か裏があるか。まあ、あのリリスモンが半ば強引に同行させたのだ。全幅の信頼を置くことなどできないのは分かりきっていたけれど。
「して、二つ目は」
「え? あー、うん。……レイヴモンってレベル幾つ?」
「む? ふむ、某は究極体で」
「へえ、そうなんだ」
と、相槌を打って、溜息を一つ。本当は情報源を聞いてやろうと思ったのだが、今はまだ、下手に深く突っ込むべきではないか。
傍で疑う。多分今はこの関係がベター。真意がどうであれ、この距離が一番分かり易い。なんにせよ、今は味方という立場を取っているのだし。
まあ、ちょっとさっきの方向転換は強引だったけど。
「ところでこれから……」
「おい」
何となく気まずい空気に話題を変えようとするが、そこに割り込んだのはインプモンだった。何やら頭から灰まみれで。
「あらインプモン。お元気?」
「……人で無しめ」
一人でできるもんって自分で突っ込んどいて何を。肩をすくめて無言で溜息を吐いてやる。インプモンはぐぬぬと唸って、ちょうどそんな時。
ふむ。と、レイヴモンが空を見上げ。釣られて目をやれば、続けられた言葉はなんだか久しぶりの、
「どうやら、敵襲のようで」
「……え?」