□第五夜 赤枯のジャーニー
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5-3 枯野の行軍(1/4)

 
 荒野に口を開ける大穴へと飛び込み、下へ下へ。闇の道を抜け、光の門を潜り、そうして私たちは――空へと投げ出される。
 声にならない叫びが口から飛び出して、嗚呼、下が見えない分さっきの暗闇のほうがマシだった。いっそ気を失ってしまいたかった。

「しっかしまた、えらいとこに出たもんだな」

 なんて暢気にインプモン。なんで落ち着いてるのこいつ。というか私これもう普通に死ぬんじゃ。

「おい、ヒナタ頼むぞ」
「へえ?」

 私が半ば命を諦めかけると、不意にインプモンがそう言って私の肩をつかむ。頼む? 何を? え?

「宜しいので? 必要とあらば鉄の獣ごと……」
「必要ねえよ。いいから……行け!」
「え? わああ!?」

 言い終わると同時、インプモンはベヒーモスの上からレイヴモン目掛けて私を投げ飛ばす。元々空中だったものの、ベヒーモスという支えを不意に失い、姿勢を保つこともままならない。私は宙でくるくると回転しながら……って、なにこれえへえ〜!?

「おっと。ご無事で?」
「ぶ、無事な、わけ……!」

 もう何が何やら。上も下も分からぬままレイヴモンに抱えられる。後で覚えてろよこの悪魔。というか何故に私に一言も説明しないのだこいつらは。
 文句を言ってやりたかったが体に力が入らない。怒鳴る気力もなかった。

 レイヴモンはぐったりした私を抱え、ゆっくりと下降していく。

「お気を確かに」
「ならもっと早く……って、インプモンは?」
「既に着地されたようで」

 レイヴモンの視線を追い、真下に目をやる。まだまだ遠い地上に、それでもはっきりと目視できるほどのクレーターができていた。

「あれは墜落って言わない?」
「ふむ、確かに。言い得て妙」

 そう、レイヴモンは感心したようにこくりと頷く。うん、まあいいか。自信あったみたいだし。レイヴモンもちっとも心配してないし。

 さて、と。切り替えるように息を吐き、改めて眼下の地上を見渡す。そこは――灰色の世界だった。土も、木々も、全てが灰に埋もれた、そんな世界。

「ここは……」
「その名を、枯れた森、と」
「枯れた……森」

 そうして私たちはゆっくりと、灰に埋もれたその地へと降り立つ。
 クレーターの真ん中でもがくインプモンの下半身を一瞥し、灰色の地平を見遣る。冷たい風が吹き抜けた。とても、とても物悲しい世界であった。
 
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