□第五夜 赤枯のジャーニー
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5-1 霧中の道標(4/4)
「で、肝心の仲間だけど」
ふうと溜息を一つ。もう何度目かも分からない。ともかく落ち込んでも始まらない。今は前へ進もう。私は頬を叩いて後ろへ視線をやる。
「インプモンは……あ、友達いないんだっけ」
「ほっとけ」
「ならレイヴモンは? 当てとか、リリスモンに何か聞いてたりしないの?」
今度は隣を飛ぶレイヴモンへ視線を移す。問えばレイヴモンは一瞬口の端を歪め……今笑った? 気のせいだろうか。気付けばいつもの仏頂面で、
「一つ、心当たりが」
「どんな?」
「北の地にある名も無きならずものの群れ。彼らが数度に渡り、アポカリプス・チャイルドとおぼしき天使たちと交戦している、と」
ならずもの? 要はギャングか、あるいは盗賊団のようなものだろうか。確かに魔王とかそっちサイドっぽい気はするけれど。困っているからと快く協力してくれたらそれはもうならずものじゃないような気もする。少なくとも今、私の頭に浮かんだイメージでは、だけど。それに、アポカリプス・チャイルドと“おぼしき”だしなあ。
「そのならずものって、結構有名なの?」
「表立って行動を始めたのは、天使たちと同時期のようで」
同時期、って割と最近? てっきり魔王とかに並ぶくらいの有名所かと思いきや。世界の闇を七分しているらしい魔王さん方と、ぽっと出のチンピラ集団じゃ落差が激しすぎるような。しかも後者のほうが善戦しているような言い方に聞こえたけど。
私が眉をひそめて考え込んでいると、インプモンがやれやれと皮肉げに肩をすくめる。
「当て、ってほどでもなさそうだな」
「確かに……そうだけど。でもこのまま当て所なく彷徨ってるよりはマシじゃない?」
「かもな」
「では……」
インプモンの言葉に、レイヴモンが視線を寄越す。インプモンは不本意だとでも言わんばかりに息を吐き、そこまで言うなら行ってあげてもいいんだからねっとばかりに頷いた。めんどくさい子である。
「しょうがねえ。案内しろ」
「御意に」
言うが早いか、レイヴモンの黒翼が風を打ち、ベヒーモスが唸りを上げる。嗚呼、なにはともあれ、これでようやく目的地が決まったわけだ。
私はもう一度自分の頬を叩いて、さあ、大変なのはこれからだ。前途多難であること以外、何も分からぬこの旅は、折り返しすらまだ見えないのだから。悪夢は、まだ始まったばかりなのだから――