□第五夜 赤枯のジャーニー
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5-1 霧中の道標(2/4)
「ところで、次はどこ行くの?」
荒野を走り出してすぐ。ふと、そう言えばそれをまだ聞いていないなと気付く。私が首を傾げるとしかし、インプモンは何言ってんだとばかり、
「そりゃもちろん、アポカリプスなんとかの本拠地に決まってんだろ」
「で、それってどこにあるの?」
「さあ? でも光の柱でこっちに来たんだし、おんなじことすりゃそのうち着くだろ」
「適当な……というか昨日どうして聞いておかなかったの?」
「ああ、すっかり忘れてた」
言い切りやがった。はあ、と溜息を一つ。すると隣を飛んでいたレイヴモンが不意に言葉を挟む。
「奴らの本拠地は我々もまだはっきりとは」
「んだよ、使えねえな」
あなたもね。と心の中で突っ込む。
「しかし……お二人は光の柱でこの荒野へ?」
「あ? そう言ったろ。それがどうした」
インプモンが素っ気なく返す。そんな邪険にしなくても。しかしレイヴモンは気にもせずふむと唸り。独り言のように呟く。
「この物理レイヤの荒野は、デジタルワールドの表層レイヤ」
「知ってるっての」
「そして光の柱はリアルワールド球から降り注ぐ情報の波」
「だから知ってるっての」
レイヴモンは空を見上げて。釣られて視線をやればそこには彼の言うそれ。空に浮かぶ機械の塊。インプモンはあれが私たち人間の世界への帰り道と言っていたか。少し苛立った声を上げるインプモンにレイヴモンは視線を戻し、
「光の柱を使った無作為な転移は表層から深層への一方通行」
「だからなんなんだよ」
「つまり、奴らの本拠地は深層の小世界ではなく」
くいと地面を指差した手を、今度は空へ向けて。
「この表層より更に上、ということになるのでは」
「……あれ?」
「え? それってつまり」
「光の柱では、辿り着けぬかと」
要はこの世界は、高層ビルのように幾つもの階層で構成されているわけだ。そして光の柱は上層から下層への一方通行なエレベータ。今いるここがビルの屋上で、てっきりビルの中のどこかに目的地があると思ったら……目的地はビルの上空だったと。
「なら、上に行くにはどうしたら?」
「樹上の果実が地へ落ちるほどに、深層へ降るは容易きこと。しかし……」
昇るのは、落ちた林檎を枝に戻すくらい難しい、と? というかそれだけ昇れるなら天使なんてスルーして家に帰るけど。
嗚呼……悪夢だ。