□第五夜 赤枯のジャーニー
11ページ/13ページ
5-4 二叉の岐路(1/2)
「またこれぇー!?」
「舌噛むぞヒナタ」
灰の大地にベヒーモスを駆り、疾走する。レイヴモンの放った雷電に、私たちへの注意が逸れたその隙に。
ハンドルにつかまりながら視線だけを背後へ移す。レイヴモンの一撃を逃れたのは、おおよそ十数体。不意打ちとは言えあの一瞬で実に九割近くを葬ったということか。なんて無茶な奴。
僅かな身震い。きゅっと、唇を噛んで視線を戻す。
「ねえ、これからどうするの?」
「どうもこうも……どうしたもんかな」
かくんと、首を傾げてインプモン。この役立たずが。なんて毒づいてみるも、確かにこれは、困ったものだ。
当初の予定通りならずものの皆さんを頼ってみるか? ただしその場合、鳳凰たちに追われながら先行部隊を追いかける形になるけど。挟み撃ってくださいと言わんばかり。そもそも味方をしてくれる保証すらないわけだけれど。
かと言って一旦姿を隠そうにもたった今あっさりと見付かったばかりだ。微かな邪気、とか言っていたか。どういう理屈かはわからないが、鳳凰はこちらを探知する術を持っているらしい。
と、なると残るは、
「……逃げる?」
ぼそりと小さく提案すれば、インプモンは眉をひそめて舌打ちする。
「確かに。一旦出直すべきかと」
そんな相槌に視線を横へやる。相変わらず神出鬼没な。
「レ、レイヴモン! さっきの天使は?」
問いつつ振り返れば、最初の一割程に減った軍勢を率い、こちらに迫る鳳凰。天使は……背の上だろうか。地上からでは確認できないが。
「多少の手傷は。しかし……」
「かわされたな。つーか、あの鳥野郎が相殺しやがったか」
「相殺?」
「あいつ、雷撃を咄嗟に自分の炎で防ぎやがった。辺りの味方ごとな」
そう言って、ち、と舌打ち。インプモンは忌ま忌ましげに、迫る鳳凰を一瞥する。と、今度はその視線をレイヴモンへやり、またも舌打ち。
「……お前なら逃げ切れんな?」
「は?」
「ヒナタ抱えてどっかに身を隠せ」
「え?」
インプモンの提案に、私とレイヴモンは思わず顔を見合わせる。って、何よそれ。
「ちょっと、何言って……」
「ヒナタが乗ってなきゃもっとスピード出せる」
「っ……邪魔、だってこと?」
「そうなるな」
インプモンは冷たく言い捨てて。沈黙。私は小さく唇を噛んで、無言のまま、レイヴモンへ手を伸ばした。