□第四夜 紫煙のラスト・エンプレス
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4-4 比翼の騎士(1/2)
「では今宵は城でゆるりと……明日の朝にでも発つがよかろう」
そんなリリスモンの言葉に甘え、私たちは城で一晩を過ごすこととなった。本当はしばらく滞在してもいいと言われたのだが、どうやらインプモンは余りここを気に入ってはいないよう。先を急ぐと言って聞かないのだこの悪魔は。
まあ、確かにここに留まったところで問題の先送りに過ぎない、か。
案内された寝室のベッドの上で、天蓋を仰ぎながらこれからのことを考える。考えるほど鬱になるばかりで名案なんて出てきやしないのだけれど。
「にゃっほー! ごっはんっだよーん、にゃ!」
なんて、騒々しい声に静寂が破られ、私は無意味な思考を止めることにした。
賑やかにやって来たバステモンに案内され、ダイニングルームへやって来る。私とは別室を用意されていたインプモンは既に席に着いていた。何やら少し不機嫌そうではあったが……まあ、どうでもいいや。知るもんか。
レディーデビモンに椅子を引かれ、大きなダイニングテーブルに着く。奥の席で微笑むリリスモンに会釈をする。
ああ、でも困ったな。マナーとかよく分かんないや。いいのかな?
どうしたものかと半ば固まるも、構わずレディーデビモンたちは次々に豪勢な料理を運んでくる。ちらりと向かいのインプモンへ目をやれば、マナーなんぞ知ったことかとばかりにがっついて。……まあいいか。私もそろりと手をつける。
「時に、明日は何処へ?」
食事を始めて程なく、葡萄酒の注がれたグラスを片手にリリスモンが不意に問う。それに対するインプモンの即答には、思わず耳を疑った。
「とりあえず天使の本拠地に乗り込む」
「……は?」
「は、って。他に行くとこなんてねえだろ?」
それは……まあ、そうなんだけれども。そういう問題じゃなくない?
あっけらかんと言い放つインプモン。言葉に詰まる私。そんな私たちにリリスモンはさも楽しげに笑みを投げ掛けて、そしてこんなことを言うのであった。
「ほほほ。勇ましいことよ。しかし……せっかく拾うた命を無闇に捨てることもあるまいて」
「なら、どうしろって?」
「仲間を集めてみてはどうじゃ?」
「仲間ぁ?」
「孤高の蝿の王には気乗りせぬやもしれぬが……単身乗り込み、無様に散るが魔王の誇りかえ?」
一度は眉をひそめたインプモンも、そんな言葉には反論もできなかった。