□第三夜 黒鉄のナイト・メア
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3-1 孤独の疾走(1/1)
孤独だった。
貴方ならそれを孤高と言ったろうか。強く、誇り高く、隷属することなど決してない。そんな貴方が去ってから、私は幾つの夜をさ迷ったことか。
走り続けた。求め続けた。探し続けて、迷い続けた。
草原を駆け、砂漠を駆け、荒野を駆けて、夜闇を駆けた。
咆哮。鉄の牙が噛み合う不協和音。大地を削る足音に、巻き上がる砂塵。
嗚呼――
王の名と力を与えられ、騎士の命と姿を与えられた。その身は矛盾を湛えて、心は解けないパズルに迷い込むよう。
貴方は――あるいはそんな私の、最後のピースであったろうか。
乾いた空気を切り裂いて、渇いた大地を踏みしだく。
嗚呼――
遠境の空に閃く光の筋は、立ち昇る雷の如く。貴方であろうはずがないそれ。ならば――私はどうしてこの荒野を駆け抜けるのだろう。どうしてこの胸は高鳴るのだろう。
ただそこへ、行かねばならぬと私の知らない私が告げる。
貴方ならそれを運命と言ったろうか。
嗚呼――
嗚呼――
嗚呼――!
荒野の空に、獣の叫びがこだまする。どこかで誰かが、同じ空を見上げた気がした――