□第二夜 白妙のファナティック
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2-3 逃走の旅路(4/4)

 
「ところで……スラッシュなんとかはどうなったの? 倒したの?」

 荒野を歩きながら問う。本当は知りたくも関わりたくもないのだが、残念ながら私の生死に割とダイレクトに関わること。それに――行けども行けども代わり映えのしない景色に、話題がなければそろそろ心が折れそうだった。

 インプモンはふむと腕を組み、首を傾げる。

「そう言えばどうなったろうな。途中で横穴開けて抜け出したから……ゲート自体は無茶苦茶になっちまったろうから、巻き込まれてりゃただじゃ済んでねえとは思うけど」

 無茶苦茶に、というと、嗚呼――あの時、確かゲートとやらに呑み込まれた瞬間、インプモンはありったけの魔法陣をばらまいて……なにがどうなったのか私にはさっぱりだが、天使の焦った表情からなにかとんでもないことをしていたのだろう。

 というか、よく無事だったな私たち。何気にかなりの無茶をしていたんじゃ。なんて、今更思い出して少し身震いする。

 と――嗚呼、そう言えば。

「あの時、なんだかインプモン大きくならなかった?」
「大きく? なんだそれ」
「なんだって言われても……ああ、まあいいけど」

 氾濫するゲートの光の中で、私の手を取るインプモンの腕が一瞬……見間違いだったろうか。インプモンは首を傾げて眉をひそめる。

「それよりヒナタこそなんかしなかったか? なーんか妙な感覚が。ホントにデジヴァイスとか……」
「インプモンまで言うの? それ」

 私が天使に命を狙われた、そのありもしない理由。見てみろと言わんばかりにポケットを探る。そう言えば鞄も向こうに落としてきたままだ。持っているものと言えば、

「ケータイに、あと生徒手帳くらいだって、ほら」

 突き付けて、ああと気付く。

「そうだ。あの魔法陣みたいの全部使っちゃったんじゃないの? 私の安全のために補充しといてよ」
「私の、だけか……」
「なにか?」
「あ、いや。了解」

 半ば押し付けるようにインプモンに生徒手帳を手渡す。大人しく受け取ったインプモンは荒野を歩きながら器用に魔法陣を書き上げていく。……いやいや、私は悪くない。はずだ。

「にしても」

 自分に言い聞かすように首を振っているとふと、インプモンが足を止めてぽつりと言う。

「いいタイミングだな。ヒナタには先見の明があるよ」
「え……?」
「追っ手だ。気をつけろよ」
 
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