□第一夜 黄昏のアンリアル
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1-2 夕闇の遁走(4/4)

 
「わ、悪い!? だって私は……!」
「わ、分かってるよ。ヒナタは悪くないし、もっともだ。俺もできればそうしたい」
「なら……!」

 私が詰め寄るとインプモンはなだめるようにどうどうと肩を叩く。獣か私は。
 しかし続くインプモンの言葉にはさすがに閉口せざるを得なかった。

「まずさ、ヒナタ手ぶらじゃね?」
「う……」
「落としてきたんだろ、そのケータイっての。拾いに戻るのか?」

 その指摘は、うん、まあそうなんだけどね。

「それに、また開くかどうかもわかんねーよ。どうやってこっちに来たのかもわかんねーのに」
「え……そうなの?」
「うん、そうなんだ。あと、これが一番問題なんだけど、俺が帰ったからってヒナタのこと諦めるとも限んなくね?」

 それは……確かに。うん、もっともだ。思わず納得する。

 確かあいつコンクリートとかスパスパ斬ってたな……その気になれば私を斬るのもほんの一手間か。

 って、そう言えば。

「それにしても、全然追いかけてこないけど……」

 ここに隠れてからいい加減随分と経ったけど。土地勘がないにしてもこれは余りにも。

「そうなんだよな、俺もそれが気になってた。何考えてんだあいつ?」

 そろりと大通りへ顔を覗かせインプモンは首を傾げる。

「まあ、一応天使型だからな。関係ない人間は巻き込まないつもりなのかも……」
「え……天使?」
「うん? ああ、そうだけど、言ってなかったか。あいつ天使で俺は悪魔」

「……じゃ、やっぱりあなたが悪いんじゃ? 大人しく捕まりなさいよ」
「うわひっで。ヒナタひっでぇ。なんもしてねーよ俺」

 スカーフを噛んでよよよと泣き崩れる、ふりをするインプモン。可愛くねーよ。

 思わずいらっとする。

 しかしそれが期せずして引き金になってしまったのか、私はつい、そんな些細ないらつきに任せて声を上げる。

「あー、もう! もうやだ帰る!」
「えええ!?」
「こんな悪夢はもうおしまい!」

 ぱんと手を叩き立ち上がる。ああ、もういい。もう沢山だ。

「ちょ、ヒナタ?」
「来なさいインプモン」
「あの……ええと、どちらへ」

 思わず後退るインプモンを無理矢理つかまえ小脇に抱える。

「あれ、あれあれ? ヒ、ヒナタさん?」
「ぐっどらっく、インプモン」
「ぎゃーー、売ーらーれーるー!」
 
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