□5周年リクエスト小説B
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■リクエスト小説B:「-花と緑の-」IF設定番外編
もしもの花と緑の
【たとえばこんな三角関係】
由々しき事態である。
楽しげに談笑する二人の背中を見ながら、彼は危機感を募らせる。
前方を歩く二人――ハナとウィザーモンはそんな彼の胸中を知る由もなく、益々会話を弾ませる。
「ウィッチェルニー? 何それどこそれ!」
「スマートフォン……そんなものが普及しているのか」
魔術に興味津々のハナと、リアルワールドに興味津々のウィザーモン。がっちり噛み合う二人の好奇心が話の種を尽きさせない。
端から見ていてとても楽しそうで、仲睦まじく、だからこそ、由々しき事態なのである。
つまりはオイラが、ハナの唯一無二にして正当なるパートナーであるところのこのヌヌ様が! 蚊帳の外に置いてけぼりなのである! 寂しいのである。
「な、なあハナ! 実はリリリン村で毎年面白いお祭りがあってさ……」
「ん? あー、はいはい。後で聞いたげるからちょっと待ってて」
「あ、はい……」
最優先で聞けやああああ! と叫びたい衝動を抑えて力なく返す。
村一番のイベントであるリリリンハーヴェストで勝てないとなると最早万策尽きたといっても過言ではない。
「ねえ、空飛ぶ時マントの裏地光ってたよね? マントに魔法が掛かってるの?」
独り敗北感に打ちのめされるヌヌを尻目に、ハナはウィザーモンのマントをちょちょいとつついて問い掛ける。
オイラの裏地もひょっとして光っていないだろうか。まあ、光っていたところで興味はないでしょうけれども!
「ああ、そうだね、これには“不完全”な飛翔の術式が刻印してあるんだ」
「“不完全”? あ……もしかして、呪文を唱えたら“完全”になるの?」
「察しがいいね、その通りだよ。飛翔の魔術は少々複雑でね、詠唱だけで構築するのは骨なんだ」
「なるほど、オイラのこの辺になんとなく暴走しそうなテンションがずっとあるのと似たようなもんか」
「ああ、そのとお……え?」
うっかり同意しかけるもウィザーモンは眉をしかめる。無理やり会話に混じってみたが駄目だったようだ。
「もう、なに? 構ってほしいの?」
「べ、別にそんなんじゃないんだからね!」
「ああ、そうなんだ」
「構ってください!」
試しに引いてみたが駄目だったのですぐに押す。
「はあ、しょうがないなぁ」
イエス! 引いて駄目なら押してみろい、ってなあ!
ハナは肩をすくめると溜め息を吐き、よっこらしょいとそこら辺の木の枝を拾う。
そして、ぶん投げる。
「そーら、取ってこーい」
「あっひゃー! わんわん!」
「でさー、ウィザーモン、魔法ってあたしにも使えたりしないの?」
「え? あ、ああ、そうだね、ゼロからとなると難しいが、例えばこの外套のような補助装置を使えば可能だろう。よかったら使ってみるかい?」
「え? いいの? やったー!」
「……って、うおおおおぉぉぉい!?」