□不定期(2022-)
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【邂逅】


 これまでの粗筋!
 ひょんなことから光のスピリットを手に入れたヒナタ。元の世界へ帰る手掛りを探す中、水のスピリットを持つマリーと出会い、旅の仲間となる。
 そうして二人が出会ってからしばらくした、とある日の夜。野営の準備を終えた二人はガールズトークに花を咲かせていた。

「でねでね? これがそのときのー」

 と言ってもほとんどマリーが一人で喋っているようなものではあったのだが。

「そう。ふふ」

 けれどヒナタもヒナタで楽しそうに、マリーの話に笑顔で相槌を打つ。マリーはふと、そんなヒナタの様子に笑みを零す。

「なに?」
「いやー、ヒナって出会った頃に比べるとよく笑うようになったなー、って」
「え、そんなに無愛想だった?」
「無愛想っていうか……無表情? ずっと表情変わんないしこの人なに考えてんだろって思ってた」
「確かに無表情は昔からよく言われるけど……そういうマリーだって最初はツンツンしてなかった?」
「えー? あー……うん、まあ、してたかも」

 そういって遠くを見るマリー。
 二人の脳裏にいつかの記憶が蘇る。それはインプモンとふたり旅を続けるヒナタの前に、突然マリーが、いや、ラーナモンが現れたあの日の記憶――



「やっと見付けた! あなたたちがスピリットを盗んだ犯人ね!」
「え?」

 唐突に現れた少女に、そのよくわからない言い掛かりに、ヒナタたちは顔を見合わせる。

「大切なスピリットを盗んだ挙げ句、悪用するなんて……このあたし、“水のラーナモン”が絶対に許さない!」

 そんな言い分にヒナタはふむと唸り、少女を見据える。半魚人を思わせる青い肌とヒレを持つ、デジモンの少女。本人が名乗った通り、水のスピリットを受け継ぐ十闘士の一人・ラーナモンであることは知っていた。ヒナタはもちろん彼女を知らないが、それがヴォルフモンの記憶であろうことは感覚的に理解できた。
 ヒナタは空を見上げて少し、その手の中に光のスピリットを具象化させる。

「さあ、素直に返すならあたしも手荒な真似は……」
「じゃあ、はい」
「うん? あ、どうも」

 差し出された光のスピリットを受け取り、ラーナモンは思わず頭を下げる。そうしてスピリットを見て、ヒナタを見て、またスピリットを見てから視線をヒナタに戻す。ラーナモンは盛大に叫んだ。

「……って、えええ! 返すの? なんで!?」
「え? だって返せって……」
「俺もびっくりだよ。この先どうすんだよ」
「狙われる理由なくなるしいいじゃない。いざとなったらインプモンが守ってよ」
「へ、しょーがねーなぁ」

 呑気に言い合う二人にすっかり勢いを削がれ、ラーナモンはただただ困惑するばかり。

「えぇぇ……ちょっと待って、なんか思ってたのと違う……」

 彼女曰く、古代十闘士を英雄と崇めるデジモンたちから、魔王とそれに加担する人間が神聖なスピリットを奪い、悪用していると聞かされたのだという。

「言い掛かりがすごい」
「どうせいつものあいつらだろ。よくもまあそんなすぐバレる嘘こいたもんだな」
「うぇぇ、嘘だったの!? ぐぬぬぅ、許せない!」
「いや、素直すぎるでしょ」

 今にも殴り込みに行きそうなラーナモンに、このまま放っておいたら向こうでまた騙されてこっちに返ってきそうだなと、ヒナタは自分たちに同行することを提案する。
 ラーナモンは少しだけ考えて、改めて二人の顔を見ながら頷く。

「うん……二人のこと信じてみる。だから、スピリットは返すよ。その、ヒナタ……さん」
「さん付けもスピリットもいらないから。これからよろしくね」
「うん! あ、いや、スピリットは受け取って?」

 こうして、旅の仲間にラーナモンことマリーが加わることとなったのであったーー



 いつかの記憶に思いを馳せて、今ここにいるマリーの顔を見つめ、ヒナタは微笑む。そうして、出会いのきっかけとなったスピリットの納められるデジヴァイスを一瞥し、ヒナタはふと脳裏に過ぎった考えを口にする。

「ところでマリー、話は変わるけれど……水と光のダブルスピリット的なこととかできたりしないかな」
「うわ、なにそれカッコいい! って、また手放そうとしてる! いい加減ヴォルフモン泣いちゃうよ?」

 たぶんとっくに涙目であった。


-終-


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