□2017年 夏期
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【癒しの存在】


 サユキの朝は早い。
 オレが起きるとサユキはいつも先に起きていて「おはよう」って言ってくれる。オレはまだまだ眠くてぼーっとしていて「おはよう」もうまく言えないのにサユキはすごいやつだ。

 サユキの部屋には毎朝決まった時間に人を起こすのが仕事の“メザマシドケイ”というやつがいるのだが、いつもサユキのほうが早く起きているから“メザマシドケイ”はショーバイあがったりだ。テンショクしたほうがいいと思う。

 サユキは毎日“コーコー”という施設に通っている。なんでも勉強を教えてくれるところだそうだ。“コーコー”が始まる時間にはもっと遅くても間に合うらしいのだが、朝早く出掛けると“ワンチャン”という生き物に出会えるそうだ。
 会って何をするんだ? って聞いたらサユキは「遠くから見てる」と言っていた。多分“ワンチャン”は人気の大道芸人か何かだ。オレも一回見てみたい。

 サユキが“コーコー”に行っている間、オレは単なるゴクツブシなわけじゃあない。「“オカーサン”に見付からない」という、サユキから頼まれた大事なニンムがあるからだ。
 どうやら“オカーサン”はこの家の主らしい。サユキは主に内緒でオレを匿ってくれているのだ。危険を冒してまでオレを守ってくれる、サユキはとてもいいやつだ。

 夕方になるとサユキが“コーコー”から帰ってくる。無事にニンムをやり遂げたオレが「おかえり」って言うとサユキはいつもオレの身体を揉んでくれる。ネギライのマッサージだ。サユキが言ってる「もふもふ〜」というのがどういう意味かは知らないけど、きっと疲れが取れるおまじないか何かだろう。オレのえいちぴーは全快だ。

 オレのご飯はサユキが用意してくれる。なにぶんオレはヒカゲノミ、主である“オカーサン”から表立ってホドコシは受けられないのだ。オレの食費をネンシュツするため、サユキには苦労をかけてしまっている。ココログルシーカギリだ。

 アルバイトでもしようかしら、とサユキは言っていた。どうやらオレの食費を稼ぐための仕事を探してくれているらしい。サユキをクガクセーにしてしまうのはシノビナイ。
 そんな苦労をオレにはミジンも見せずにサユキは笑ってくれる。オレのマッサージをしてくれる時と同じ顔で「ネコカフェ〜」と呟いていた。意味はわからないがきっとその笑顔はサユキのシンノツヨサノナセルワザであろう。

 勿論オレもただ養われているだけでいるつもりはない。サユキが見ていたキュージンジョーホーシにオレにもできそうな仕事が載っていた。今度サユキにも相談してみようと思う。キグルミショーという仕事だそうだ。もんざえモンによく似たデジモンが既に働いているようなのでオレでも大丈夫だろう。しかしこちらの世界でテーショクについていたデジモンがいたとは驚きだ。ソンケーノネンをいだかざるをえまい。

 夜になってもオレの一日はまだ終わらない。サユキのアンミンを守るという最後のニンムがある。サユキが安心して眠れるまでオレが傍についていてやるのだ。いかなる敵にも決してサユキのアンミンをボーガイさせはしない。オレはサユキのナイトであるからして、ヨヲテッシテでもサユキを守り抜かねばならないのである。
 さあ、闇に潜むチミモーリョーにアッキラセツどもよ、どこからでもかかってくるがいい! このオレが相手になってやむにゃ……!

「ふふ、おやすみドルちゃん。あ〜、もふもふ〜……」
「まもぉゅぅ……んにゃ……ぐー」

 こうして、オレの長い長いいつも一日は、いつもどおりの終わりを迎えるのである。ぐー。


-終-



SS第64弾は【癒しの存在】。
人様のオリキャラって難しい。
 
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