□2016年 春期
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【白馬の王子様】


「――以上が私の提案する作戦だ。意見のあるものは?」

 黒檀の背もたれに体重を預け、卓上に放るように書類を置いて、騎士は円卓に居並ぶ同士たちへと視線を巡らせる。その問いに、静かに話を聞いていた同士の一人が小さく手を挙げた。

「本当に、そのような策が通じるのであろうか。成功の見込みは如何ほどか」

 問われて立案者である騎士は、ふむと小さく唸りを上げる。同士たちを見遣れば皆一様に、僅かなりの不安を抱いているようだった。

「確かに、諸君の憂慮は尤もであろう。守りは堅牢、まさに難攻不落。我々はこれまで攻略の糸口さえも見出だすことができなかった」

 その言葉に、同士たちはただ俯くばかり。

「だが……!」

 不意に立ち上がり、卓上に強く手をついて言った騎士に、同士たちは思わず顔を上げる。

「だからといって戦いもせぬものには欠片の勝機さえもない。……違うか?」

 ただ力強く、ただ真っ直ぐに、そんな騎士の言葉に同士たちは顔を見合わせる。困惑するもの、頷くもの、様々であったが、否定するものはただの一人もいなかった。
 やがてぽつぽつと彼らの目に灯るのは、闘志の火。この困難へ立ち向かおうという、確かな意志の現れであった。

「ああ……確かにその通りだ」
「臆するなどらしくもなかったな」
「そうだな、やれるだけのことをやってみよう!」

 卓上に置かれた作戦立案書を手に、同士たちは熱く想いをたぎらせる。

「さあ行こう、同士たちよ!」

 そんな騎士の――トーカンモンの言葉に、ハニービーモン、モニタモンら同士たちが応と声を張り答える。

 リアルワールド女子の憧れを体現することで好感度を稼ごうという浅はかなるこの、“白馬の王子様”作戦を実行すべく、ラーナモン様ファンクラブ、およびジェネラル親衛隊(自称)の面々は日帰りで城を発つ。

「さあ、まずは手始めにユニモンの確保だ……!」

 そうして、話せば長くなるなんやかんやの末、彼はやがてシマユニモンを仲間に加えることとなるのだが、それはまた別の話。いずれ、機会があれば語るとしよう。
 そして好感度が特に上がらなかったことはこの機会に語っておくとしよう。

 それでもなお、彼らは明日もまた己が戦場へと赴くだろう。何をもって何が達成かは当人たちにもさっぱりだが、いつか努力が報われる、その日まで――


-終-



SS第37弾はランダムお題【白馬の王子様】。
だいぶ遠い場所から王子様を目指す男たちの物語。そしていつの間にか仲間に入ってるストーカー忍者。
 
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