□2016年 春期
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【死亡フラグ】


 私はレオモンである。名はダンテという。
 人間のテイマーと行動をともにする、所謂パートナーデジモンという奴だ。

 デジタルワールドとリアルワールドを繋ぐ大規模な恒常ゲートが開き、早十余年が過ぎた。いまや我々デジモンの存在も人間たちに広く認知され、選ばれし子供でなくともパートナーを持つものが増えている。
 私のテイマーの場合は両親がともに選ばれし子供であったが、彼女の回りにはそうでないものも多いようだ。

 私と彼女の出会いは今から9年前。彼女がこの世に生を受けたその日のことだった。元より友人であった彼女の父親より娘が生まれたと報せを受け、私はすぐさまデジタルワールドから駆け付けた。
 はじまりの街で暮らす私にとってデジモンの誕生はある種の日常であったが、人間の誕生など想像もつかないことだった。半年以上も前から楽しみにしていた私は報せを聞くや否や駆け出し、ピザ屋かと突っ込まれながらも一番乗りで病院へとやって来た。
 当時は今ほどに我々の存在も認知されておらず、もっぱら擬態や迷彩プログラムを用いて目立たぬようにしていたものだが、あの日の私はついついそれを失念し、人間たちを随分と驚かせてしまった。まあ、今となっては笑い話であるが。

 そんな私にデジノームたちがデジヴァイスを与えてくれた時のことは、私が彼女のパートナーとなったあの日、あの瞬間の情景と感情は、私の電脳核のもっとも深い場所に今なお鮮明に焼き付けられている。これから先も、決して忘れることなどないだろう。

 いつかキミにもパートナーができるよ。なんて、私にそう言ったのは他でもない彼女の母親だった。まさかそれが自分の娘になるだなんて、私同様、想像だにしていなかったろうけれど。

 その日、私は誓ったのだ。必ず彼女を守り抜くと。たとえこの命に変えようとも。
 とは言え、いまや世界は平和そのもの。滅多なことなど起こりはしないだろうけれど……だが、だからと言って気を抜いていいはずもない。敵はいつ何時やってくるかわからないのだ。どこから悪い虫が寄ってくるかもわからないのだ。

 そう、今も昔もこれからも、私は彼女の盾となり、必要とあらば矛となろう。それが私の誇りであり、生き甲斐なのだから。

 私の名はダンテ。
 彼女のくれた名とともに、今日も彼女の隣を歩んでゆく。この身が果てるまで――


-終-



SS第34弾は【死亡フラグ】。
あえてタイトルに触れないスタイル。触れるまでもないステイツ。
 
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