-花と緑の-

□最終話 『花とヌヌ』 その二 魔神復活編
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シーンX:勇者の矜持(1/5)

「あひゃひゃひゃひゃぁぁぁおぅ!」
「ぶるるるぁっしゃぁぁぁぁぁい!」

 奇声を上げて再び熊の鉄拳と魔神の石頭がぶつかり合う。銅鑼を打つような重低音が幾度となく響き渡る。その間隙に、ワルもんざえモンからの追撃もまた止むことなく降り注ぐ。
 黒い光球が熊の頬を掠め、肩を掠め、膝を掠め、頭突きを、拳打を、蹴撃を阻む。
 端的に言って、劣勢だった。
 暴走しまくったお陰かなんとなく力のコントロールはできるようになってきたが、それでようやくサシでどっこいどっこいといったところ。下の連中はまだこの戦いにはついてこれまいし、一人で両方を相手取るにはさすがに無理があった。ふむ、まさかヌメモンとして生きてこんなことを言う日がくるとはな。

 しかし、こちとら体感では限界突破1,000%ぐらいだってのに、向こうは寝起きで顔だけなのに互角とか、割と泣きたくなる。中々調子にも乗らせてもらえないものだ。まあ、ヌメモンが伝説の魔神と張り合ってるだけでも奇跡なのだが。

 とにもかくにも気張っていくしかあるまいと、再び指のない拳を握りしめて構えを取り、敵の姿を睨み据えた――そんな時だった。

「おん?」
 
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