-花と緑の-

□最終話 『花とヌヌ』 その二 魔神復活編
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シーンV:漢達の意地(1/3)

「だ、男爵? ねえ、ちょっと大丈夫なの?」

 土中を掘り進める男爵の後を追いながら、狭いトンネルの中をふよふよ飛び回るハグルモンたちに眉毛をぐにゃりと歪めながら、いろいろ聞きたいことがある中でひとまずあたしはそう問い掛けた。

「む? おお、ヌヌ殿であろう。先ほど飛んでいくのが見えた。方角ならば問題ない!」

 だが返ってくる答えはこちらの意図と少しずれていた。勿論それも大事だけれど。

「モグラ君、彼女が聞いているのはユーのそのゾンビっぷりだろう。ついでにミーとしてはハグルモンたちまで連れてここへ来た理由も聞いておきたいのだがネ」

 やれやれと、溜息を吐いてツワーモンが言えば、男爵はドリルを止めることなく器用にうむと頷いて、

「派手な爆発が見えたものでな、居ても立ってもいられず這ってでも加勢に向かおうともがいておったら……何やらよくはわからぬが、ハグルモンたちが黒い石ころのようなものを吐き出したのだ」
「黒い石ころ?」

 うん、いや、それはもしかしなくても黒い歯車じゃ……。

「それが我輩の身体に入った途端、不思議と痛みも疲れも吹き飛んでな! こうして駆け付けたというわけだ! ついでに妙にハイだ!」

 ぐっと、いい顔でサムズをアップする。
 わかりやすいドーピング!
 操られているというわけではなさそうだが、多分それ駄目な奴だ。

「ハグルモンたちは置いてくるつもりだったのだが、言っても聞かんでな。すまぬ」
「やれやれ、仕方がないネ」
「むう、感覚器官を部分的に麻痺させているのか、あるいはオーバーライトに……興味深いな」

 ごめんよと男爵がドリルごと小さく頭を下げれば、ツワーモンが肩をすくめ、ハグルモンが意味もなく回り、魔術師はぶつぶつと一人考え事をする。後にしろい!

「とにかく熊君を迎えに行くとするネ。後のことはそれからだ」
「あ、うん……」

 でも、と言いかけて、言葉を飲み込む。大地を砕く威力がまともに直撃したのだ。下手をしたら既に、考えたくもないが再起不能ということもありうる。ありうるが、だからといって後ろ向きなことばかり言っていても始まらない。それならそれで熊を拾って逃げるだけだ。また今度頑張ろう。ボス戦で「にげる」コマンドが効かないなんて誰が決めた。大体あれがそんな簡単にくたばるタマか。

「ハナ君、大丈夫かい?」
「うん、へーきへーき。ウィザーモンも、てゆーか皆こそ大丈夫?」

 よし、と頷いて問えば、代わる代わる頷き返す。

「ミーは問題ないネ」
「私もまだ戦えるよ」
「はぐはぐ」
「うむ、我輩も妙に元気だ」

 ただ、最後の一人だけは素直にほっとできはしなかったが。先程は好奇心が先立っていた魔術師もさすがに心配そうに声をかける。

「ニセドリモゲモン、君は今……」
「いや、わかっておる。傷も癒えておらねば体力も尽きたままだというくらいはな」
「え?」
「だが、多少は無茶をせねばならぬ時もある。今がまさにそうであろう」

 はぐはぐと、何か言わんとしているハグルモンたちにぐっと親指を立て、男爵はおっとこ前な顔で言ってみせる。あるいは、歯車の正体にすらとうに気付いているのかもしれない。それでも、戦うべき理由があるのだと熱く燃える両の目が語る。

「なあに、心配めさるな。ともに宴に行くと約束したではないか。救ってもらっておいて粗末にはせぬよ、この命」
「男爵……!」
「ああ……そうだね、その通りだ。必ず生きて帰ろう!」

 男爵の言葉に魔術師は力強く頷いて、ぐっと拳を握る。はぐはぐと、ハグルモンたちも同意するように頷き合う。なんか段々言ってることがぼんやりわかるようになってきた気がしないでもない。
 だがそんな中、一人浮かない顔をする忍者がいた。水を差して申し訳ないのだが、とツワーモンが切り出す。
 
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