-花と緑の-

□第一話 『花と緑の』
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シーンX:最初の晩餐(1/2)

 
 じゅるると味噌スープを一口。ふうと溜息を一つ。さて、と。

「まずは、お礼を申し上げたい」

 畏まって深々と頭を下げるバロモンさんに、噴き出しそうになりながらも慌てて二口目の味噌スープを飲み込む。ちょっと鼻から出た気がする。

「い、いえ、たいしたことは……」
「おお、ご謙遜を。ハナさんのお陰でこの村は守られたのです。さあさあ、遠慮なさらずどうぞ」

 満面の笑みを浮かべて、バロモンさんはあたしの目の前に所狭しと並べられた料理の数々を勧める。次から次へと運ばれてくるその中には得体の知れない物体もちらほらと紛れてはいるものの、概ね美味しそうなものばかり。満漢全席か何かですかこれは。その様はまさに“おいでませ勇者様”。
 変な汗を流しながらひたすら味噌スープだけを流し込む。と、不意にぴょこぴょこと動く影が横合いに見える。目をやれば、白くて丸くて耳の生えた生き物が頭に皿を乗せて小さく跳ねていた。

「ニッコリンゴのパイです。きゅーせーしゅしゃま!」

 にっこにっこと微笑みながら舌足らずに言ったその生き物に、思わずきゅんとする。
 ……うあああ、もういいや。なるようになれ。あたしが救世主ですけど何か!?
 見た目普通のアップルパイを一切れいただく。うむ、んまい。

「さっすがオイラの見込んだ救世主だ! なあハナ!」

 なんて、ぬちょぬちょしながら騒いでただけの癖してやけに誇らしげなヌメをスルーして、アップルパイをもう一切れ。

「ところで、そんなハナにもう一つ頼みたいことがあるんだけど」

 パイに噛り付きながらちらりと視線をやる。期待に満ち満ちたヌメとちびちゃんたちのキラキラした目が見えて、脊髄反射にすら近い速度で目を逸らす。
 はい来たほら来たそら見たことか。そんなこったろうと思ったよ!
 
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