□エイプリルフール企画'16
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「うおおおおぉぉぉぉおおっ!?」
叫びながら跳び起きる。ベッドの上から転げ落ち、逆さまになりながら見覚えのない部屋の中で辺りを見回す。肩で息を吐いて、そうして、インプモンは頭を抱える。
嗚呼、なんて悪夢だ、と。
「おや……目が覚めてしもうたか」
そんな聞き覚えのある声に視線を向ける。そして一目ですぐさま状況を理解する。
「おいこら」
と睨んでやればなよりと身をよじり、袖で口元を隠してくすくすと笑ってみせる楽しげな女帝・リリスモンに、インプモンはぐぬぬと唸りを上げる。力の大半を失ったとはいえこちとら元魔王。電脳核にクラックでも仕掛けたか、あんな訳のわからない夢を見せるなど、同じ魔王でもなければできない芸当であろう。つまりは、全部こいつの仕業だなと、逡巡もなく確信する。
「てんめぇ……!」
「おお、怖い怖い」
「怖いのはこっちだぁぁ! なんだあの悍ましい悪夢は!?」
「ほほほ、そう吠えるでない。興味があると言っておったではないか」
「いやそりゃルーチェモンの話は聞いたけれども! 意味が大分ちげぇんだけど!?」
「まあ、よいではないか。多少脚色はあれどおおよそ性格はあんなところじゃ」
「だとしても俺の性格まで脚色してんじゃねえよ! どんな呪いだこれぇ!?」
叫びながら顔を青くする。そんなインプモンにもリリスモンはなお涼しい顔。からかい甲斐のある子だこと、とでも言わんばかり。
「ほほ、呪いなど大袈裟な。刻限を半月も過ぎたというにバレンタインのお返しがいまだ足りぬようじゃからのう、ちと催促じゃて」
「はああぁぁ!? もう充分だろが! っていうか嫌がらせの理由それぇ!?」
「おやおや、異なことを。七粒も食ろうておいてお返しが三つでは計算が合うまい。七引く三は幾つかの?」
「一粒ごとにあの無理難題!? まじで死にかけたっつったよな!? 行っただけでも褒めろやぁぁ!」
乾いた荒野の空にそんな叫びがこだまする。二柱の闇の王が揃い踏む白亜の城は、今日も今日とて平和であったという。
エイプリルフール'16
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バレンタインデー'16:アフター
『グーラの苦い夢』――終