□5周年リクエスト小説C
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「うおおおあおおあひゃぁああぁぁ!?」
全身をバタバタしながら必死に羽ばたくヌヌ。そのゴールドヌメヌメボディを必死につかむあたし。金塊食って手に入れた金の翼であたしのお家を目指して空を行く。当たり前だがこの航空便に安全装置などついていない。運賃節約の代償が命の保障とはな。
しかし耳元でうるさいやつだ。運んでもらっといてなんだけれども。熊着て飛ぶより身軽だろうが。
「おい、あたしが重いみたいなリアクションやめろ」
「いや、身体の大きさ考えて!? てゆーか冷静だなおい!」
人に見られないよう地面は遥か下。このヌメヌメから手が滑ったらとてもやべえこと間違いなしである。でもまあこのくらいの命の危機なら何回か乗り越えてるからなぁ。
「あたしも強くなったもんだ」
「何か大事なものを失っただけにも思えるが……」
言うじゃないかこの野郎。同感だ。
「てか運動したらお腹空いてきたな。なんかある?」
「あるように見えるのかこの空に。つーか動いてんのオイラだけなんだけど」
「ぶら下がってんのも疲れるんですー」
体育館の天井に挟まってるバレーボールに油でも塗ってぶら下がってみろ。疲れるで済んでるあたしの人外っぷりが少しはわかるだろうよ。誰が人外だ。
「まあ、確かに腹は減ったなぁ」
「あんまり買えなかったもんねぇ」
「オイラ最初に食った丸いやつもっと食いてーな」
「たこ焼き? あ、うちたこ焼き機あるよ」
「タコヤキキ? え? もしかして自分で作れんのか?」
「お母さん、大阪出身だからね」
「よくわかんねえけどすげぇな、オカーサン!」
帰ったら久しぶりに食べたいな。なんて考えながら遠く小さな町並みを見渡す。
ヌヌのことはどう説明したものか。そういえばあたしって家出扱いなんだろうか。捜索願いとか出てたらどうしよう。とかはまあ、一旦置いといて。
真上のおもしろ生物を見上げてくすりと笑う。
どうやらまだまだ、退屈しない日々が続きそうだった。
-終-