-花と緑の-

□最終話 『花とヌヌ』 その三 エピローグ
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シーンU:別れの刻へ(5/10)

「ぶるるぁぁー!」

 魔神が雄叫びを上げる。逃げ惑う子供たちを執拗に追い回し、夕餉の香りが漂う平和な村を我が物顔で闊歩する。
 悲鳴を上げる子供たちの一人が思わず袋小路に逃げ込み、はっと振り返る。にたりと、魔神は獲物を睨み据えて薄く笑う。その手が小さなデジモンへと伸び――瞬間、ごがんと、魔神の後頭部に金属塊がぶつかる。
 衝撃に魔神は倒れ込み、子供はするりとその横をすり抜け、袋小路から脱する。
 魔神はぷるぷると震える腕を上げ、

「るぁぁ〜〜……無念ぶるぁ」

 しかして魔神は、魔神ハナさんは力尽きるのであった。

「全力で遊びすぎだろ」

 病み上がりって知ってた? と呆れるヌヌに、起き上がっててへぺろする。
 思いの外に勢いよくぶつかった金属塊、ハグ次郎が少し心配そうに寄ってくるが、勇者の頭は頑丈なのだからして、平気だよと笑ってやる。ホントに痛くないが知らないうちにデジソウルとか漏れてたかもしんない。あたしちゃんと普通の中学生に戻れるかな。

「まあいいや、飯だぜ」
「やったあ! お腹ぺこぺこ」
「そんだけはしゃいだらそうだろ」
「みんなー、いっくよー」

 おー、と手を挙げる子供たちを引き連れ、広場へとそぞろ歩く。絵面は完全にガキ大将のそれであったという。
 
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