-花と緑の-
□最終話 『花とヌヌ』 その三 エピローグ
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シーンU:別れの刻へ(3/10)
はあ、と揃って溜息を吐く。折角の祝賀ムードだったが、空気はどうにも重苦しい。
そんな中、ヌヌだけがあっけらかんと、食べていたお肉を飲み込んで言う。いつの間にか流れてしまっていたその話を、ひょいっとつまみ上げてみせる。
「そんでよう、結局朗報ってそれか?」
なわけないよな、というニュアンスでヌヌが言葉を促せば、ワイズモンは微かにふふと笑う。
「おや、もう話を続けていいのかな」
なんて皮肉げに肩をすくめ、おもむろにあたしを見据える。
「君が元の世界に帰る方法についての、ね」
突然のその言葉を、あたしは理解するに少しの時間を要した。ヌヌたちもまた同様に、なぜだかウィザーモンさえも驚いている様子だった。
「かえる……え、帰る? どゆこと?」
「ああ、弟子が面白いものを見付けてね。詳しいことはその当人が睨んでいるので後にするが、とりあえずは我々に任せてくれ給え」
「あ、うん……うん?」
言われて見ればウィザーモンがどこか咎めるような表情をワイズモンに向けていた。
「ウィザーモン?」
「っ、いや、なんでも……後で話すよ」
そんな様子には皆一様に首を傾げるが、誰もそれ以上を問いただすことはしなかった。なんだかややこしい事情があるだろうことくらいは、さすがに察しがついた。
そんな妙な空気を振り払うように、ダメモンがふと声を上げる。
「あ、そいやこっちも一個だけグッドなニュースがあったネ」
「え、なになに?」
「ワルもんざえモンたち、うちが預かるネ」
なんていうダメモンの言葉に、あたしたちは思わず顔を見合わせる。
聞けばワルもんざえモンたちは今、自分たちのアジトにあった地下牢にぶちこまれているそうだ。警察みたいな組織があるわけでもなさそうだし、確かに村長たちとしても扱いには困っているだろうけれど。
「自分に用があるなら連れてこいってマスター言ってたから、丸投げしちゃえばいいネ」
「バンチョーが?」
「文句言ってみた甲斐があったヨ」
言ったのか。
「ま、みんながいいなら、だけどネ。なんなら今のうちにボコっちゃう?」
「別にいいよ、そんなの。いいよね?」
と、皆を見れば一様に頷いてみせる。
悪を憎んで熊を憎まずだ。てゆーかもう十分ボッコボコにした。
「オッケー。んじゃ後で村長たちにも聞いてみるネ」
あたしはちらりとヌヌたちに目をやり、うんと頷く。
まあ、万全の魔神を真っ向から叩きのめした化け物なら大丈夫だろう。ワルもんざえモンたちは大丈夫じゃないかもしれないが、そこはあたしたちの知ったこっちゃない。
「そんじゃまあ、そんな感じで。ウィザーモンたちの話はいつにする?」
「そうだね、夕食の後に時間を貰えるかい?」
「ん、わかった。じゃ、一旦解散。かな」
「ああ、手間を取らせたね。ゆっくり休養してくれ」
そう言って席を立つウィザーモンにひらひらと手を振り、あたしは再びお肉に手を伸ばすのであった。