-花と緑の-

□最終話 『花とヌヌ』 その三 エピローグ
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シーンU:別れの刻へ(9/10)

 グラスの飲み物をちびりと飲んで、たったそれだけでも疲れた様子の男爵を半ば無理矢理寝かせ、あたしは診療所を後にした。放っておいたら這ってでも見送りまできそうだったが、「今度会ったらいっぱい話そ」と去り際に言ったあたしの言葉に、男爵は少し驚いたように、けれど笑って頷いてくれた。
 診療所を出ると外にはダメモンとチューチューモン、そしてハグルモンたちが待っていた。

「元気だったネ?」
「うん、今眠ったとこ」
「そっか。よかったネ」
「うん」

 よかった、と、あたしはまた胸を撫で下ろす。

「ミーたちももう少ししたら村を発つネ」
「道場に帰るんだね」
「その前にハグルモンたちを送ってくネ」
「あ、そっか。がらくたの町、だっけ?」

 元々その町から連れ去られたハグルモンを助ける依頼を受けたのだと、そう言っていたな。一回聞いたきりだったがよく覚えてたなあたし。偉いぞ。

「ワルもんざえモンたちは仲間が引き取りにきてくれることになってるネ。とりあえずはそれ待ちネ」
「へえ、ちょっと会ってみたかったな」
「ハハ、ミーと違って愛想のない奴ネ。まあ、チューチューモンよりはマシだけ……あいたっ!」

 なんてじゃれてる二人を見ながら、あたしはハグルモンたちと笑い合う。ほんとに仲いいなお前ら。

「じゃ、これで最後だね」
「ハハ、別に死ぬわけでもないネ」
「そっか。うん、そうだよね」
「そうネ」

 ダメモンの言葉に頷いて、あたしは二人に向き直る。

「ダメモン、チューチューモン、元気でね」
「イエア、ハナちゃんも元気でネ。ほら、チューチューモンも挨拶するネ」

 言われたチューチューモンはそっぽを向いて「けっ」と吐き捨てて、けれどもぴっ、と、顔の横で気怠そうに指を立ててみせた。そんなチューチューモンに、あたしもまた指を立てて笑う。そうして、

「ハグ太郎、ハグ次郎、ハグ吉、ハグ子、ハグ美、ハグルド、ハギー、ハグ之丞」

 ハグルモンたちを順に見ながら名前を呼んで、あたしの気持ちを察したようにわらわらと集まるみんなに、ばっと腕を広げて、まとめて抱きしめてやる。

「元気でね、みんな」
「はぐはぐ……!」
 
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