□デジモン観察日記
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■8月1週目

 
 8月1日 土曜日 晴れ

 パソコンから卵が生まれた。大きさは大人の頭ほど。レンガ色の水玉模様という如何にも怪しいデザインの白い卵だ。
 夜中にパソコンから出てきたその卵は、朝になると孵化した。生まれたのは黒くて丸っこい毛むくじゃらの、なんとも形容しがたい生き物だった。これぞまさに世に言うUMAというやつだろう。ひとまずボタモチ(仮)と名付ける。
 しばらく観察していると腹の虫がなる。あんな体のどこに腹があるのか分からないが、やはり食事は必要らしい。何食なのかよく分からないのでとりあえずコンビニで色々と買い漁って与えてみる。何でも食べた。そのあとウンチした。掃除が大変だった。


 8月2日 日曜日 晴れ

 ボタモチ(仮)に早くも異変が訪れた。何て観察し甲斐のある奴だ。朝顔とかはこいつを見習うべきだ。
 昨日ボタモチ(仮)と名付けたが早々に名前を変えなければならなくなった。(仮)でよかった。元・ボタモチ(仮)はなぜか電子音っぽい音を上げて白っぽいようなピンクっぽいようななんとも言い難い色合いの丸っこい変な生き物に変身する。大きな目と口があって頭には触覚とも耳とも言い難い妙なひょろひょろが付いている。ボタモチ(仮)より幾らか生き物っぽくは見えるが、まだまだまともな生き物には程遠い。
 感触を確かめてみようと手を伸ばすと突然襲われる。顔に跳びかかって来た。まさか食われるのかとも思ったが違ったらしい。ただ顔に張り付かれただけだった。意味が分からない。何がしたいんだ。息苦しくなってきたので無理矢理引っぺがす。なぜか嬉しそうな顔をしていた。


 8月3日 月曜日 晴れ

 徹夜で新しい名前を考えたが思い浮かばなかったのでこのままボタモチで貫き通すことにする。初志貫徹と言う奴だ。違うか。違うな。だがこれといってボタモチに変化は無い。暇なので躾けてみる。とりあえずはトイレからだろう。狭いベランダに古新聞を敷き詰めてここでやれと言ってみる。言った直後に部屋の中でウンチをされる。鬱だ。


 8月4日 火曜日 晴れ

 毎度部屋の中を汚されたんじゃ堪らないので頑張って躾けてみる。しつこくウンチウンチと言っていたらそのうちボタモチの奴もウンチウンチと言い出した。喋っちゃったよこいつ。お前ホント何?


 8月5日 水曜日 晴れ

 食べる、ベランダ、ウンチ、ぶり、あーゆあんだすたん? と身振り手振りを交えて教えてやるとあいと答えた。それからはちゃんとベランダでウンチをするようになった。どうやら知能は非常に高いらしい。ホントにどういう生き物なのだろう。
 考えているとウンチに行ったボタモチが中々戻ってこないことに気付く。ふと見るとボタモチはベランダから外を眺めていた。そう言えば生まれてから一度も部屋から出してやった事が無かった。ちゃんと言うことも聞くし、夜に少し散歩にでも連れて行ってやるとしようか。


 8月6日 木曜日 晴れ

 両親やご近所が眠りつくのを待っているうちに日付が変わってしまった。仕方ないだろう。こんな訳の分からない生き物をいきなり見せるわけにもいかない。
 とりあえずボタモチと散歩に行く。途中人とすれ違うが抱きかかえてぬいぐるみのフリをさせる。ちょっと笑われた。恥ずかしかった。でもボタモチは嬉しそうだった。
 帰ってきたら朝方。部屋に鍵を掛けて寝る。母が怒鳴っていたような気がするけど爆睡した。


 8月7日 金曜日 曇り

 再度ボタモチに変化が訪れる。青白く光って今度は小さな恐竜のように変身する。小さなと言っても1メートル以上はある。今度はさすがにやばいと思ったが中身はそんなに変わっていなかった。いつもどおり腹の虫を鳴らして食事を要求してくる。ほっと胸を撫で下ろしたがよくよく考えたら今度は食事代がえらいことになりそうだ。鬱だ。
 
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