□第十夜 蒼天のコマンドメンツ
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10-3 蒼天の鉄槌(2/4)

 
「無茶言いやがるな」

 ベルグモンの告げた作戦内容に、インプモンは微笑混じりの溜息を吐いて、にまりと口角を上げてみせる。確かにこれ以上ないほどに無茶苦茶、無謀とさえ言える。だというに、なにゆえこの魔王殿はちょっと楽しそうなのだろうか。

「怖じ気づいたか?」

 なんて皮肉げに言うベルグモンの背を小突き、馬鹿を言うなとばかりに鼻で笑う。そんなインプモンに私は小さく溜息を零す。まったく、どいつもこいつも。

「気楽なものね」
「気負ってもしょうがねえだろ」

 それに、とインプモンはベルグモンの向かう先を見遣る。つられて目をやれば私の目にさえ徐々にはっきりと見えてくる戦場。インプモンの言わんとしていることはすぐに解った。どのみちもう、悩む時間もない。

「ミラージュガオガモン……!」

 私がこくりと喉を鳴らすとほぼ同時、複雑な面持ちで戦場の友をその目に捉え、声を上げたのはレイヴモンだった。視線を追えば戦場の空。何人も手出し無用と言わんばかりの、二人きりの決闘場。矛を交えるのは獣頭の騎士・ミラージュガオガモンと、闇の竜・ダークドラモン。二人の戦友を二つの眼に映し、レイヴモンはただ静かに拳を握る。

「ほう、あれが今のゼブルナイツか。見ると聞くでは大違いだ」

 そんな時、賢者がぽつりと言う。それはどこか緊張感に欠ける口調、というより、好奇心が勝るといったところだろうか。私はその物言いに一つ、小さな疑問を感じて眉をひそめる。

「今の、って?」

 問えば賢者は嗚呼と一拍を置いて答えた。

「ゼブルナイツの前身は今は亡き魔王の軍勢、その残党なのだよ」
「ま、魔王?」
「それも二柱の、ね。バルバモン配下の守護騎士団を中心に、スカルサタモンらデーモンの配下たちまで……よくもあれだけ揃えたものだ」

 感心するように賢者は唸り頷く。
 元魔王の配下、それが“ならずもの”の正体か。

「じゃあ、ダークドラモンは……」
「強欲の魔王・バルバモン配下の守護騎士団を率いた三将軍の一人だ。そして恐らくそれが」
「この戦いに至る理由」

 賢者の言葉をそう補足したのはレイヴモンだった。

「やはり復讐か」
「復讐……あ」

 察して、はっとする。つまりは主の敵討ち、と。

「そういうことだ。まあ、個人的には幾つか疑問もあるが……今は置いておこう。もう、お喋りの時間もなさそうだ」
 
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