□第七夜 灰燼のフロンティア
8ページ/13ページ

7-3 灰色の戦場(3/4)

 
 東の空より進撃するはパロットモン率いる白蛇・クアトルモン、雷鳥・サンダーバーモンの混成部隊。西の空より迎え撃つはスカルサタモン率いる悪魔竜・デビドラモン部隊。兵力差は、十対一といったところ。

 ――妙だ。

 今まさに激突する両陣営、その様子を遠目に、クロスモンは違和に顔をしかめる。奴らの兵力はこちらの一割程度。多勢に無勢、余りにも。
 襲い来るダークドラモンの一撃を避け、再度前線を一瞥する。奴らの空軍戦力は見たところスカルサタモンとデビドラモンのみ。地上にはスカルサタモン同様、眼前の竜の片腕と目されるデスメラモン。と、そしてその配下たる炎の怪人・メラモンの歩兵部隊。数は空の部隊と同程度か。つまりは、合わせてもこちらの二割程度。それも戦力の一部でしかない先行部隊と比べて、だ。

 不自然なほどの優勢。出来過ぎたほどの勝ち戦。

 奴らはこの本拠地を隠すためか、戦線を各地に展開し、戦力を分散させていた。こちらの速攻が功を奏し、各地の幹部クラスはこの戦いに間に合わなかった。――と、そう思いたいが。

 言い知れぬ不安。けれどそうしている内にも戦局は動き――

 パロットモン率いる先行部隊に僅か遅れ、陸軍の歩兵部隊が前線に到達する。鋼鉄の天使・シャッコウモン率いる巨象・エレファモンと鎧獣・ライノモンの混成部隊はデスメラモンたち陸軍戦力と接触。こちらも兵力差は歴然。開幕から幾らも経たぬ内、早々に侵攻を許すほどに。
 陸に比べ空はまだ僅かばかり粘っているようだが、それでも少しずつ、確実に奴らの本拠地へ――そこに隠された蝿の王へと近付いている。

 ――本当に、このまま。

「上手くいくと、思ったか?」
「っ!?」

 不意に、巨鳥の内心を、その不安を見透かしたように竜が笑う。

「潮時だ」

 何を、と問うが早いか、灰の荒野が鳴動を始める。――地鳴り? 何だこれは……! 震える大地はまるで生き物のように、時に隆起し、時に陥没し、あちらこちらに亀裂が走る。地の裂け目からは重く低い唸り。
 刹那の静寂。そして天地を揺らす咆哮が雷鳴のように耳を衝く。枯れた大地は砕け散り、瞬間、この地より奪われた――否、この地に封じられていた全てが解き放たれる。

「こんな……馬鹿な……」

 地の底より枯れ野を、侵攻する陸軍ごと呑み込むそれ。一変する情景を前に、巨鳥は半ば呆然と呟いた。
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ