いつもの日常(長・中編)

□元旦(正月)
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 「山陽、見ろ。初日の出だ」
 「ああ・・・そう」
毎年のことながら飽きないものだな。乗務員室で、二日酔いの頭を押さえつつ、初日の出で興奮している東海道を見る。この所、新年に頭が痛いのは、二日酔いだけではない気がする。東海道が、始発でいきたがるのには理由が2つある。1つは、山陽と一緒に、初日の出を見たいというほほえましい願い。そしてもう1つ・・・
 (思いだしたら、胃まで痛くなってきた)


 「東海道上官。これどうぞ」
 「これも、食べて下さい」
 東海職員によって次々に出されるおせち料理。しかし、東海道自身は一口も食べない。もともと、食が細いというのもあるが、並べられるのを見ただけでお腹いっぱいなのだ。変わりに、ミニサイズのおもちが入った、雑煮を1杯だけ食べてる。それを見ながら、もくもくとおせちを食べる山陽。これが、東海道が始発に行きたがる理由その2だ。丁度、始発に乗ると、朝ご飯の時間につく。すると、職員によって、いっぱいごちそうが出てくる。とてもじゃないが、食べきれない。山陽手伝ってくれと、東海道が頼みこんできたのが、数年前。それから、毎年、始発に行き、もくもくとおせちを食べるのが、正月の日課になってしまった。
 (前は東海道も食べてたはずだけど)
チラっと隣を見つつ、そんなことを思いながら食べていると、さすがにお腹いっぱいになってきて・・・「秋田助けてくれ」と、おもわず大食いの同僚を思い浮かべてしまう。その途端『RURURU』と、携帯がなり、まさに助け船と出てみる。しかし、
 『山陽か?』
の声に、地獄に突き落とされる。
 「九州・・・」
思わず、涙声になった山陽。
 『貴様、今どこにいるのだ?』
 「東海だけど」
 『なぜ、はとの所に』
 「毎年、呼ばれているので」
 『なら、早くウチにも来い』
ちょっと待って九州と言う前に、一方的にきられてしまう。山陽が、茫然としていると、どうかしたか?と東海道が声をかけてくる。それに、説明しようと口を開きかけた瞬間、
 「兄さん」
の声と共に、扉が開き、ジュニアこと、東海道本線が姿を現す。
 「お前、なんで?」
 「兄さんが全然食べてないって、職員からTEL貰ったから、あわててきたんだよ」
少し、怒ったような口調で言い、「ホラ、食べなよ」と、東海道の世話を始めた本線を見て、
 「後は、ジュニア。よろしく」
 「えっ・・・山陽さん?」
ジュニアが、何か言おうとしたが、もうすでに、山陽の姿はそこになかった。
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