短編(PART1)

□木苺
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 手の中にある物を持って、東京駅上官室に急ぐ、上越新幹線。彼は、今日、支社でめずらしい物を貰った。それは、彼にとって、なつかしい物だったから。
 「お疲れ。」
と、言って入って行けば、
 「お疲れ様です。上越先輩。」
と、唯一上官室にいた長野新幹線が、笑顔で挨拶を返す。
 「あれ・・・長野一人?」
上官室を見渡し、聞けば、
 「はい。」
と、答える。
 「そっか・・・」
少し、がっかりした、声で上越が言えば、
 「何か、あったんですか?」
と、聞く長野。そんな長野に、
 「あっ・・・忘れてた。長野。見て、木苺だよ。」
と言って、手の中にあった物を見せる上越。
それを見て、長野は、
 「ラズベリーですよね。」
と言う。そんな、長野に、ムッとしつつ、
 「あのねぇー、長野。これは、僕にとって木苺なんだよ。」
と、言いそのあと、とんでもない台詞を言う。
 「なんたって、人の家で、採ってたんだから。」
その瞬間、
 (それは泥棒では・・・)
と、思う長野。隣では、そんなことを気にせず、貰った、木苺を美味しそうに食べる上越。それを、見ながら、
(この人にとっては、甘酸っぱい思い出なんだろうな。)
と、思い、
 「僕も、一つ貰っていいですか?」
と言い、木苺を口の中に入れた、長野だった。

END

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