短編(PART1)

□桜餅
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 「お前の分だ。」
と、言って渡せば、
 「何?これ。」
と、いつもの返事。ひっそりと静まった、夜の東京駅上官室。そこにいるのは、東北新幹線と、上越新幹線の二人だけ。
 「桜餅。」
と、東北が言えば、
 「甘い物、苦手なんだけど・・・」
と、上越。これも、いつもの会話。
 「仕方ないだろ。5個入りだったんだし・・・」
少し、不機嫌に東北が言い、
 「だいたい、残しとかないと、お前、怒るだろ。」
と、続ける。
 「別に・・・いいのに。」
と、言いつつも、素直に受け取る上越。そして、食べ始める。甘さの中に、葉のしょっぱさ。しばらく、無言で食べ続けるが、
 「やっぱ、甘い。半分食べて。」
と、東北に渡す。一つため息をつき、上越が残した桜餅を食べる、東北。食べ終わって、上越を見ると、何か言いたそうにしている。
 「何だ?」
と、聞けば、
 「口の中が甘い。お茶。」
と、言う。しょうがない奴。と思いつつも、お茶を入れる為に、渋々立ち上がり、キッチンに向かう、東北。そんな、東北を見つつ、
 「ねえ、東北。」
と、同じように、立ち上がり、キッチンに向かいながら、上越が声をかける。
 「何だ?」
と、上越に背中を向けたまま東北が聞く。そして、
「こうすると、桜餅みたいだね。」
と、言って、東北の腹筋あたりに自分の腕を回し、背中に張り付く上越だった。

END

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