いつもの日常(長・中編)
□みどりの日
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「後、2年だね」
秋田が上官室にかかっているカレンダーを見ながら山陽に言うと、山陽は(は?)という顔をする。今、上官室にいるのは、山陽と、秋田の2人だけ。
「何がだよ」
コーヒーを飲みながら秋田に聞けば、
「柿の木だよ」
みんなで植えたでしょ。と言う。それを聞き山陽も、そんなのやったなと思い出す。
6年前の5月4日『国民の休日』から『みどりの日』に改められたその日、
「せっかくだから何かやりたいよね」
秋田が山陽の顔を見ながら言う。確か、その日も、今日みたいに上官室には2人しかいなかった。
「例えば、どんな事だよ?」
あまり、乗り気ではなかったものの聞いてみる。すると、
「やっぱり、『みどりの日』にちなんだものがいいよね・・・」
家庭菜園?とか言えば、
「家庭菜園は勘弁」
東海でやっているしと、すぐに否定をする山陽。
「じゃあ、何がいいかな?」
考え込んだ秋田に、
「記念なんだから、『記念樹』とかでいいんじゃねぇ?」
「木か・・・」
山陽が、そう言えば、秋田がつぶやくように言う。そして、一言。
「もちろん、植える木は食べ物だよね?」
何日かが過ぎ、木を植える日、発案者の秋田が選んだ種は(他の同僚達に、選んでいいよと言われたので)桃と、栗と、柿の3種類。
(やっぱり、食べ物か・・・)
まあ、予想はしていたがと思いながら、土を掘っていると、
「山陽」
と、秋田に声をかけられる。ん?と顔だけ向けると、
「なんで、この組み合わせにしたか、わかる?」
悪戯ぽく笑みを浮かべる秋田。わかんねえと正直に言えば、見てみたいんだよねと言う。
「だって、『桃・栗3年、柿8年』でしょ」
「そうか・・・もう6年たつのか・・・」
早いよな。と山陽が言えば、
「うん。早いよね」
秋田も頷く。そして、今年も豊作だといいよねと言って出て行く。それを、苦笑で見送る山陽。また、今年も大半秋田に食べられるんだろうな。と思いながら。
END