いつもの日常(長・中編)

□憲法記念日
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 5月3日。一般的に『憲法記念日』と呼ばれている祝日は自分達にとっては、ゴールデンWeek後半初日の忙しい1日でしかない。まして、これから、連休がつづくのだ。乗客の数も半端なく多い。そんな、怒涛の午前中の業務を終え、東京駅上官室に戻ってくると、同じ様に、乗車業務を終えた長野と、ぱったり廊下で会った。
 「お疲れ、長野。そっちも忙しそうだな」
そう聞けば、
 「はい。忙しいです」
素直な返事が返ってくる。そして、二人で上官室に入る。しかし、残念な事に他の同僚達は帰っていなかった。
 「長野。昼食べた?」
冷蔵庫の中の飲み物を探しながら聞けば、
 「まだです」
の言葉と共に、「グー」とお腹の音が鳴る。
 「じゃあ、一緒に、喰いに行くか?」
水を取り出し、咽に流しこみながら、昼御飯に長野を誘った。


 「山陽先輩。今日は、『憲法記念日』ですけど、『憲法』ってなんですか?」
レストランでお子様ランチを待っている間、長野に聞かれる。
 「えっと・・・」
どうやって話せば、理解してもらえるんだ?と考え込む山陽。そして、
 「『国の法律』だよ」
なんて言えば、
 「『国の法律』ってなんですか?」
首を傾げられさらに聞かれてしまう。
 「えっと・・・『戦争しません』とか・・・?」
頭をひねりつつ、思いつく言葉を言えば、
 「戦争なんてしたんですか?」
この国が?とびっくりする長野。それを見て、
「俺、元々軍事路線」と言う言葉を呑み込み
 「そうしたんだよ」
まして、それを擁護するような憲法があってなんて言えば、
 「ひどいです」
下をうつむきながら、一言吐き出す。
 「だろう?だから、二度としないように新しい憲法を作って実行したのが今日だからだよ」
そういった所で、お子様ランチと、山陽が頼んだ定食が運ばれてきた。


 「ねえ、長野。なんで、そんなこと俺に聞いたの?」
昼食が終わり、レストランを出て、上官室に向かう途中、長野に聞けば、
 「解らない事があれば、なんでも、山陽に聞けって東海道先輩が」
あっさりとばらす長野。それを聞き、
 (長野の教育係って東海道じゃなかった?)
首を傾げた山陽だった。


END

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