いつもの日常(長・中編)

□建国記念の日
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 いつも通り乗車業務を終え、東京駅上官室に戻る山陽。
 「お疲れ」
挨拶をして、扉を開くと、
 「お疲れ様です。山陽先輩」
上官最年少の長野に挨拶をされる。
 「お疲れ、長野・・・アレ?長野一人?」
挨拶を返しつつ辺りを見回しながら聞けば、
 「はい」
いつもより、表情が硬いが頷く長野。そんな、長野の頭をなでながら、
 「何か、やな事でもあった?」
やさしく聞いてあげれば、
 「いえ、何も・・・」
すぐに否定する長野。しかし、その表情はやはり硬い。
 「ああ。そう」
話してくれないならば、仕方ない。諦めて、コーヒーを淹れようとしたところ、
 「山陽先輩」
意を決したように、声をかける長野。そして、続ける。
 「今日は、何かのお祝いなんでしょうか?」
 「えっ・・・」
訳が分からないけどと、思っていると、
 「今日は、僕の路線の民家に、いっぱい旗が立っていたんです」
いつもは、立っていないんですけど・・・と、首を傾げながら言えば、ああと納得する山陽。
 「今日は『建国記念の日』だからな」
そう長野に教えるが、「『建国記念の日』・・・」と、つぶやいてまた首を傾げてしまう。
 「ようするに、『国』の誕生日」
ニヤと笑って、簡単に言えば、
 「『国』さんにも、誕生日があるんですか?」
本気で驚く長野。そんな長野に向かって、
 「もちろん。あるよ」
また、笑って言う。そして、ふと、目を遠くにやる。
 (そういや、あまり、旗とか見なくなったな)

END

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