いつもの日常(長・中編)

□成人の日
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 「山形。これ着て」
東京駅上官室に入って来て早々手に持っていた紙袋を山形に押しやる山陽。幸い、上官室には、山形しかいない。
 「何だべ?」
首をかしげながらも、紙袋を受け取る、山形。中身を見てみれば、そこには、1着のスーツが入っている。
 「何で、これを俺に?」
袋の中から取り出し、そう聞けば、
 「今日は、成人の日でしょ」
ニカっと笑って言う。
 「それに、山形、今年二十周年だし」
だから、借りてきたんだよ。と続けて言えば、なるほどね。と納得する。もっとも、自分達の場合、人間と、違って開業で成人になることが多いのだが(1部をのぞく)
 「ありがとだず。山陽」
とりあえず礼を言う山形。しかし、次の言葉で突き落とされる。
 「でも、ほんとは今年でねぐって、来年だけどな」
ぽつりと言ってやれば、マジで?と聞き、青ざめる山陽。そして、自分の机に突っ伏す。あまりの落胆ぶりに、まあ、地元は、今年の夏だから間違ってねえんだけどと言った言葉は、山陽には届かなかった。
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