ペルソナ4 短編

□このままずっと、
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『ねー名前ー! 遊んでー!!』
『こらアリス! 主は寝ているんだぞ!!』
「はぁーい……』

クーフーリンに言われ、渋々と言った様子で諦めるアリス。
流石に可哀想に思ったのか、ジャックフロストが必死にアリスを励ます。

『仕方ないホー。名前は人間だからオイラ達とは違うんだホー……』
『でも……最近ずっと名前が別の人と居る……』

悲しそうに言うアリス。
彼女が言う"別の人"とは、きっと今も彼女の部屋に居る男の事だろう。

『やだよ……だってこのまま名前死んじゃうんだよ!? そんなの……やだ……』
『アリス……』

彼女の言う通り、もうすぐ名前は死ぬ。
それはワイルドと共に居た者の避けようの無い最期だった。

『名前が良い……名前と居たい……』
『……仕方ないだろう。我らに出来る事などないさ』
『カ、カグツチのバカ!! そんなの分かってるもん!!』
『ア、アリス待つホー!』

泣きながら何処かへ行ってしまうアリス。
アリスを追いかけて、ジャックフロストとクーフーリンも居なくなってしまった。


『……』

誰も居なくなった中、カグツチは一人佇む。
自分だって、名前が死ぬのを見過ごしたくなど無い。

もし彼女が助かると言うのなら、今すぐにでも忌まわしいあの男と我が父を引き裂くだろう。
たとえ再び父に殺されようとも、彼女が生きるのならばそれで良いと思える。それだけで、自分は己を正当化できる。

だが、彼女の為にそれは出来ない。


――あの日、あの場所で彼女と廻り逢った日。
自分は、何を思って彼女に尽くすと誓ったのだろう。

何故、自分はあの日、自ら『彼』の代わりになろうとしたのだろう。



二年前と良く似た月下で、あの日の記憶に思いをはせる。
ああ、このままずっと彼女が生きていれば良いのに、と。

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