□RIDE3
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ノチェの顔は無表情ではあったが悲しみが溢れ出ていた。

熱があるからか、いつもよりも感情が出やすいようだ。





「ノチェ…。お前は俺が守る。」

「…出来るか、お前に。」

「出来る出来ないじゃない。絶対だ。」

「…なるほどな。せいぜい足掻け。私のために。」

「言われなくてもそうする。」





嘲笑うように櫂を見る。

いや、それは諦めに近いかもしれない。

守れるはずがないと。

結末は罪を犯した時点で決まっていたと。





「もう、行くといい。皆が待っているぞ。」





ポン、と櫂の軽く肩を押す。

そして、顔の前に手を出す。

櫂はそれを掴んだ。

腕相撲をするかのような形だ。

昔、櫂とノチェが誰かとファイトする時にやっていたものだ。

それが表すのは「応援しているから勝て」だ。

互いに手を離しそれぞれの場所に向かう。

といってもこの会話の内にアイチと井崎、ミサキと森川のファイトが行われていた。

ノチェはそのまま席に着いたままだ。

ファイトが終了した為、櫂はファイトをする為にスタンディングテーブルに向かった。





「なぁ、昔からその、握手みてぇなのやってっけど何なんだ?それ。」

「約束みたいなものだ。私は応援している、だから勝て、というものだ。」

「じゃあ、櫂の方は?」

「さぁな。私がファイトする時は、案ずるな、負けはしないという意味だ。」

「てか、今日やけに素直だな。」

「…黙れ。」

「もしかしてツンデレなのか?ツンデレカップルの誕生とかすげぇー。」

「さて、三和タイシ。お前に問おう。金槌とドライバーはどちらが好みだ?」

「…すんませーん。」

「私だって昔に戻りたいよ…。」

「?なんて言ったんだ?」

「一度で聞き取れ。ただの独り言だ。気にするな。」

「昔に戻りたいねぇ〜。」




三和はニヤニヤとしていた。





「気色が悪い。今のは本音だ。隠す必要はないがトシキには言うな。
後々面倒だ。代わりにこう言っておけ。負けは許されないぞと。」

「櫂は負けねぇと思うけどなぁ。」

「未来とは予測できないものだ。勝つか負けるかはわからん。」




ズバズバと発言するノチェはそのことを十分に理解していた。

だからこその言葉。

ファイトに勝っても能力に負ける。

いつの間にかカムイと呼ばれる男の子のファイトが終わっていた。




「あ、あの!」

「ん?」

「お、お名前はなんて言うんですか!?」

「郭ノチェ。好きに呼んでくれて構わないよ。」

「じゃ、じゃあ!ノチェさんで!お、俺は葛木カムイって言います!」

「カムイだな。その年齢にしては大したものだ。」

「は?お前見てたのか?」

「そういうお前は見ていなかったのか?」

「……。(なんかすげぇー。)」

「もう少しでトシキがボーテックスドラゴンで勝つぞ。」

「マジ!?」

「本当ですか!?」




櫂のいるほうを見る。




「行け、ボーッテックス・ドラゴン!この世の全てを焼き尽くせ!」

「……っく…ッ!」

「ふん…。」




見事勝利を収めていた。




「な、なんでわかったんですか?」

「特異体質、能力だと思ってくれ。そういう力を持っているんだ。」

「へぇー。すごいですね!」

「すごくはないさ。」

「いえいえ!すごいですよ!」

「うわー、アイツスゲェ見下してる感半端ないなー。」

「勝って当然だ、ということだろう。」

「あぁ。」

「うわ!櫂トシキ!いつの間に!?」

「今さっきだ。」

「へ、へ!お、俺は気づいてたぜ!!」

「強がり言うなって。」

「つ、強がりじゃねぇ!!本当に気づいてたんだ!!」




三和はカムイと言い争った。

櫂とノチェは二人してくだらないとため息を吐いた。
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