□RIDE1
2ページ/4ページ

「よ!」

「……。」




櫂と三和は学校の門前で待っていた。

それを無視して歩く。




「な!無視するなよー。」




それも無視して校内へと入る。




「カードキャピタル行かねぇか?しばらく行ってないだろ?」




無視。




「お前のデッキ、久しぶりに見たいし。」




無視。





「負けるのが怖いのか?」




ピクッ。




「そんな臆病なやつだったのか?」

「負けるのは怖くは無いし臆病で結構だ。」

「じゃあ俺と戦え。」

「断る。弱者にかける時間は無い。」




教室に入る。

一つの机だけ荒らされていた。

ペイントだけならまだマシだ。

椅子や机には画鋲や釘が刺さっていたり、何の粉かはわからないが
椅子にかかっていた。

櫂は、転校する前よりひどくなっているイジメに顔をしかめた。

そんなひどいことになっている机や椅子を無視してノチェは
粉を払って席に着いた。

鞄を机に立て掛け本を取り出して読む。

その本には見覚えがあった。

昔、櫂がノチェに誕生日プレゼントとして贈った物だったからだ。

本屋に行って事前に聞いていた本を買ってやったのだ。

その本の題名は『神話・天使の象徴集』。




「その本、まだ持っていたのか。」

「持っていてはいけないのか?」

「いや、そうじゃない。」




ただ、小学校時代に買ったものをずっと持っていることに驚いた。

そして、ノチェが櫂のことを嫌いになったわけではないということ。

それが一番嬉しかった。





「それ、お前が転校してからもずっと読んでたぜ。余程気に入ってるんだな。」

「……。」




長く使っている割には綺麗だった。




「教科書とかボロボロになってもそれだけ無傷だったし。
ずっと肌身離さず持ってたんだろうなー。」




変わったのは外だけで根本的な部分は変わっていないようだ。




「良かった。」




櫂は安堵の言葉を呟いた。

まだ、優しさは残っている。

好機はある。

そう確信した。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ