黒い心

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タズナの家に着いた六人は少し体を休めた。

再不斬との戦いで傷ついた体を治療するというのもある。

ライは医療忍術でナルト、サスケの怪我を治していく。

カカシに関しては写輪眼の使いすぎで倒れた為治しようが無い。

そして、治療し終えたあとタズナの家の外にいた。

壁を背もたれにして湖を見つめる。

あまり見せない表情は、どこか悲しそうな顔をしていた。




「こんなところにいたのか。」





サスケがライに近づいた。





「あいつらと一緒にいないのか?」

「私は構わない。サスケ、それはお前にも言えるのではないか?」

「そうだな…。オレはお前を探していたからだ。」

「何故、私に構う?私にそんな価値などないというのに。」

「そんなことねぇよ。お前は十分良くやった。カカシの代わりに指示もした。」

「(それでも私は…、傷つけた。私の実力があれば守れたはずだというのに。)」

「一つ、聞いてもいいか?」

「…なんだ?」

「お前は、どうしてそんなに強いんだ?」

「……強い、か。強くなど無い。」




目を閉じて俯く。




「私は、守るために強くなったはずだった。しかし、この様だ。」

「守るため?」

「もう、傍にいてくれることは、隣にいてくれることはないと理解しても、
それでもお前を守りたいんだ。」

「傍に、隣にいない?」

「私は、自分の神宮一族を滅ぼした。」

「!!?」

「元々、一族の皆にも、親にも避けられていたからそれほどショックは無かった。
しかし、一番ショックだったものがある。何だか分かるか?」

「……。」




サスケは首を横に振る。




「お前だ。お前と会えなくなってしまったこと。それが一番きつかった。」

「…オレに会えなくなったこと?」

「私は一族を滅ぼした時、本当は何者かから一族を守ろうとした。
だが、私の親は“私が原因で一族が襲われた”と私を殺そうとした。
あの頃、私はまだ幼かったからか、親に少し期待していたんだ。
いつかは私を認めて一緒にいてくれる、と。それは間違いだった。
だから私は周りが焼け野原となり、私一人だけになった時現れた火影にこう言った。
私を暗部に入れて欲しいと。強くなって今度は守れるように。
嫌われたも同然の私はその頃恐れなど無かった。そういえば泣かなかったな。
いや、泣けなかったのか。ショックで逆に泣けなかったんだ。」

「…それはお前のせいじゃないだろ。その何者かが悪い。」

「それでも私は、自分の力を制御できずに暴走させてしまった。
そうだ、ここまでもお前にしか伝えていないのだが。」

「カカシも知らないのか?」

「あぁ。」




サスケは少し優越感を得た。




「私は今でも暗部だ。そして、上忍でもある。」

「なんで俺たちの班に来た?アカデミーに通わなかったのはわかったが…。」

「お前が考えているのとは少し違うな。班に来た理由は少しでも子供らしい生活を、
通わなかったのは木の葉にあまり好かれていないからだ。
お前が通っていることは知っていた。できるならば会いたかった。」

「なんで会いに来なかった…!?俺はずっとお前に嫌われたと思ってた…!」

「すまない。私は怖かったんだ。このことを知っていて拒絶されたらと。
私は他の人に拒絶されても構わない。だが、お前にだけは…せめてお前だけは…!」





感情をほとんど表に出さないライ。

皆から見れば強く見えた。

力でも心でも。

だが力は強くても心は弱かった。

いつも怯えていたのだ。

強く見えていた少女が今はこんなにも弱く見える。

幼く、頼りなく見えた。

サスケはそっと抱き寄せる。

抱き寄せた体は異常なまでに細かった。

少し力を入れれば折れてしまいそうなほどに。





「誰が離れるか。…ありがとな。打ち明けるのはつらいはずなのにな。
これからはお前の傍にいる。そして、お前よりも強くなって守ってやる。」

「私が守る。」

「男に守らせるっていう考えはないのか?」

「ない。それではまるで…(恋人のようだ。)」

「まるで?なんだよ?」

「し、知らん!」

「恋人みたい、か?」

「!?」

「考えてることはわかんだよ。お前は俺の理解者であると共に
俺はお前の理解者でもあるんだからな。」

「…そうだな。」

「(伝えるのはこの任務が終わったあとだ。ライ、愛してる。)」

「(この感情はなんだ?すごく温かい。)」




二人はこの後手を繋いで家の中に入った。

ナルトとサクラに見つからないようにずっと繋いでいた。

強く、強く。

離れないように。
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