ゼロの道

□レベル2
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次の日、皆本は局長のところに行った。




「局長。」

「なにかね?皆本クン。」

「あの子の本当の名前は何ですか?聞いてもわからないと言ってましたが…。」

「名前は凍導華燐。彼女は本当の名前で呼ばれたことはない。」

「なんでですか?」

「柏木クン!説明してくれたまえ。」

「はい。ここ、バベルに来るまで彼女は研究所にいました。
その研究所にいる間は個体識別名、ナンバーで呼ばれていたようです。」

「…なんの、研究所なんですか?」




それを聞いたとき、局長と柏木の顔が曇った。




「どうしたんですか?」

「聞きたいのでしたら教えますが…。」

「教えてください。」

「……その研究所は、高レベルエスパーを使って実験を行う研究所です。
彼女はそこでレベルアップの実験とオリジナルの超能力を生み出す実験、
その他にもいろいろと実験を受けていたようです。」

「……。バベル…ここでは名前を呼んであげなかったんですか?」

「わしらはあまり行かなくて呼んでいないんだヨ。」

「他の人は?食事のとき運ばなければならないでしょう?」

「誰もその仕事を受けてくれなかったんです。食事は一日二回。
機械で運んでいます。バベルには保護されたという記録になっています。
数年前研究所が爆発し、死者が数百人にもなる被害が出た事件は知っていますね?」

「はい。確か、実験中にトラブルが起きたという…もしかして、
そのトラブルの原因は…!?」

「華燐ちゃんです。なんの実験をしていたかは非公開でわかりませんが
その実験の途中で能力が暴走したそうです。」

「……研究所に何故いたんですか?」

「両親がお金を得るために彼女を研究所に売ったみたいです。
その両親からは相当な虐待を受けていたようですが詳細は分かりません。」

「言い忘れていたネ。彼女は一回こめかみを銃で撃たれている。」

「どういうことですか!?」

「わからんよ。本人は超能力で見えないようにしているが…。」

「そうですか…。」

「誰からも愛されず、数年間もずっと誰にも会っていない彼女は
心を忘れてしまっています。ここまでの過程で楽しさ、嬉しさという
感情は知りません。人の命の大切ささえも理解していません。」

「それは…いつ人を殺してもおかしくないと?」

「はい。」




彼女の真実。

過去はあまりにも残酷過ぎて、幼い、小さい少女には似合わない
大きな闇を背負っていた。

闇のようにつかみようのない綺麗な天使。

彼女のコードネームはダークエンジェル。

闇の天使だった。
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