ゼロの道

□プロローグ
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バベルの最下層のもっと奥深く。

一人の少女がいつもの部屋でいつもと同じように過ごしていた。

数年間外に出ていなかったからか、肌は異常なほど白かった。

バケモノだということから監禁されたのだ。

少女は言葉を理解していても実感がなかった。

生まれてからずっとそういう生活をしているからだ。

普通の生活を知らない故にこれが普通となってしまっているのだ。

いつものように音楽を聴きながら本を読んでいると
硬く、重い自動ドアが開いた。

少女は気づいてはいたが無視していた。



「この子だヨ!可愛いチルドレン達!」

「こいつがあたしらと同じ年の子!?」

「厳重ね。新型ECMが何十個もあるわ。」

「なんか、大人っぽいなぁ。」

「この子がチルドレンと同い年…。」




少女はちらりと騒がしいほうを見た。

そこにいたのは局長と自分と同じくらいの子供、そして20代の男だった。

大して気にした素振りも見せず、再び本を読んだ。




「なぁ!名前なんて言うんだ!?」

「……。」

「聞いてるの?」

「……。」

「ヘッドホンのせいとちゃうのん?」

「……。」

「完全完璧無反応。局長、この子をどうするって言うんですか?」

「この子は今までこうやって監禁されてきた。
だから外の世界を知らずに育ってきた。誰とも喋ることなく
一人で孤独に生きてきたんだヨ。」

「それで、どうしろと?」

「チルドレンと一緒にしてやってくれたまえ。いいネ?」

「わかりました…。」

「後のことは全部資料に書いてある。」

「…。(要するに、この子を救えっていうことか。
にしてもこの顔どこかで見覚えがある…。どこで見たんだ?)」

「なぁ!名前は?って言ってんだろ!」

「いい加減答えて。」

「声出せないんか?」

「……。」




少女はまだ本を読んでいる。


その本の題名は
人の存在意義の真実―だった。
 

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