スズラン学園へようこそ!

□4月 後編
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「プラチナ・ベルリッツです。 よろしくお願いいたします」

大きくはないが、よく通る凛とした声音で、彼女は自己紹介をした。 
そこは中学二年生の教室で、今はショートホームルームの時間。転校生の紹介をしていた。

「はい、ありがとう。
そこの空いてる席に座って」

担任のゲンがプラチナの背中を軽く押し、席へとエスコートした。
プラチナは小さくうなずくと、指定された席へと黙って座る。

そのようすを、ダイヤモンドはぼーっと見つめ、パールは無視して一生懸命ネタを書いていた。
ダイヤモンドは、のんびりとパールに声をかける。

「あの子、転入生だったんだね」

「え?」

ダイヤモンドに言われ、パールは初めて顔を上げて転入生の姿をみた。

「あぁ、どっかで会ったよな」

それだけ言うと、再び顔をメモ帳に向けるパール。
ダイヤモンドは、勇気を出して隣に座ったプラチナに声をかけてみた。

「オイラ、ダイヤモンド。
よろしくねぇ」

「え……」

プラチナは一瞬驚いたような顔をする。
しかしすぐにキリリとした表情に戻って、口を開いた。

「はい。
よろしくお願いします」






「オイラ、ダイヤモンド。
よろしくねぇ」

……本当に驚いた。

今まで彼女…プラチナは、いろいろな中学を転々としてきた。
その中で席に着いた瞬間に、挨拶されたのは初めてだ。
と言うかまず、声をかけられたのが初めてかもしれない。

お嬢様のような外見、立ち振る舞い、すべては幼少期から仕込まれたもの。
それが取っつきにくい印象を与えたのか何なのか、友達はいなかった。


ずっと、一人だった。
ずっと、独りだった。


「あの、」

つい声に出てしまう。
ダイヤモンドと名乗った彼は、首を傾げた。

「なあに」

「え?あ、何でもありません」

「そーお?
困ったことがあったら、何でも言ってね」

ふわりとダイヤモンドは笑った。
その笑顔に偽りはなかった。
つられて頬が緩みそうになったが、きゅっと力を入れて堪える。
笑った顔を見られるのは、恥ずかしい。

「……ありがとう、ございます」

ダイヤモンドに聞こえるか聞こえないかくらいの小声でつぶやく。

少し、スズラン学園での生活に希望が持てた。
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