俺たちは進み始める
□差し込んだ光
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次の日。
いつも通り木枯らし荘を出た。
「いってらっしゃい」と言う木野さんにぎこちない会釈を返す。
自分では努力して笑うつもりでいるが、たぶん顔をゆがめているようにしか見えないだろう。
いつも通りの時間。いつも通りの道。
雷門に通い初めて1ヶ月くらいが経って、確立しつつある生活リズム。
そのいつも通りを繰り返すだけの日々。
これからの毎日。
「少し居心地のいいところから抜け出して、色んなものに出会うのもいいと思うぞ?」
円堂さんがそう言っていた。
だから俺は雷門に来た。
だけど、結局何も変わってない。
やっぱり俺は、ひたすらに周りとの交流を避けていた。
いつもとあまり変わらない時間に学校に着く。
靴を履き替え教室へ向かう。もう慣れた。
灰色で空虚な日々。
今更どうとも思ったりしない。
そう、もう慣れた。
きっといつも通り、教室に入ってぼんやり授業を受けて、帰る。
話しかけてくる奴なんかもういない。いらない。
そんなことを考えながら、教室の後ろのドアへ。
きっといつも通りこちらを見たクラスメイトが、気まずそうに目をそらすんだろう。
だが、ドアは俺が手をかける前に開いた。
中から慌ただしく出てきたのは
「…っ!?」
倉間くんだった。
「って、なんだ神原か。おはよ」