俺たちは進み始める
□現在地点A
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「悪いな、秋!」
「ううん、全然」
話したいことがあると、ある日突然円堂君から電話がかかってきた次の日。
待ち合わせたファミレスには、円堂君とヒロト君がいた。
「久しぶり、木野さん」
「久しぶり」
私の向かいに2人が座る形でボックス席に入り、皆それぞれ飲み物を注文する。
社長として毎日を忙しく過ごしているヒロト君に会うのは本当に久しぶりで。
「積もる話もあると思うが、それはまた別の機会にな」
そう笑う円堂君の先手がなければ、世間話を始めてしまうところだった。
「あ、うん。それで?改まってどうかしたの?」
見ればヒロト君の方はなんだか疲れているように見えた。
「実はね、木野さんがやってるアパートに入れてほしい子がいるんだ」
そう切り出した笑顔が弱々しく見える。
「え、木枯らし荘に?」
「うん」
そう言って手元の資料を私の方へ差し出す。
受け取ってみると、一枚の写真が何枚かの書類と一緒にクリップで止められていた。
「神原…涼…ちゃん?」
「そう。詳しいことは全部そこに書いてあるんだけど…」
あ、男の子なんだ…。
神原涼君。
来年から中学生の小学六年生。男の子。
「ごめん、写真古いのしかなくて」
確かに、写真はまだずいぶんと幼いころのようだ。
サッカーボールを抱えて誰かに笑いかけている姿は女の子のように可愛らしかった。