俺たちは走り続ける

□多忙な昼休み
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次の授業は数学だった。
運悪く数学の教師は若くて厳しい男教師。

遅れてしまった俺は、宿題だった計算問題を黒板に出て解かされる破目になった。



「災難だったな、神原」

『倉間…本当にな。今回は真面目にやっといてよかったぜ』

授業が終わると、倉間と浜野、それから速水が俺の席に集まってきた。


「ちゅーか神原、何してたわけ?」

『入部テストのポスター。大急ぎで貼りまわってきたんだよ』

「授業間の休み時間に、ですか」

『あぁ、あと3枚残ってるけどな』

「昼どうするんだ?」


そうか。
倉間のその言葉で、今が昼休みだという事に気付く。

よく見れば三人とも昼ごはんを手にしていた。


『あー…俺は先にポスター貼ってきちゃうから。気にせず食べててくれよ』

「ちゅーか手伝う?」

『いや?いいって』


人数が減ったからって、マネージャーの仕事を
選手に手伝わせるなんてことできない。


『じゃ!また後でな』

そう言って、残りのポスターが入った紙袋を持つと、
まだ何か言いたそうにしている3人を残して俺は教室を出た。




『これでよしっ』

最後の一枚を張り終えた俺は、しばらくポスターを見ていた。


雷門サッカー部と言えば名門中の名門。

元はといえば、それは守さんたちが作り上げた歴史だ。
たった一人からだんだん仲間を集めて、ついには世界一。

その話は、守さんやヒロ兄を始め色んな人たちに聞いた。


中学サッカーを語る皆の顔は、皆輝いていて。

俺も、こんな風にサッカーと関わりたいと思わせてくれた。


それが、今はどうだ。

サッカーの強さが学校の価値を決める。
そりゃあ誰だって、負けるよりは勝つほうがいい。

でも、約束された勝利に意味なんてあるのか。
負けるための特訓に、本当に意味はあるのか…



「あの、すみません」
『えっ』
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