俺たちは走り続ける

□新入部員
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「神原」

部室の掃除を終え、ボール磨きをしていた時だった。

『あ、監督!おはようございます!』

ドアの開く音に手を止め振り向くと、そこには久遠監督の姿が。

監督が朝練に顔を出す事は珍しかった。
全員集まるか心配なのだろうか。


「今日も早いな」

監督はあまり表情や口調に感情が出る人ではない。

でも、今褒められているのだと感じ取れる程度には、俺と監督の仲は良好だった。

『そう、ですかね…』

だけど、未だに人に褒められるという事は慣れないもんだ。

「連絡がある」
『え、まだ誰も来てませんよ?』

そうなのだ。
俺が早く来すぎただけだが、選手はまだ誰一人来ていなかった。
といっても、いつもならちらほら集まり出す時間。

皆、顔を出しづらいんだろう。


「あぁ、わかっている」
『はぁ、…?』

とりあえず、ボールをかごに戻し、監督のところまで行く。

「新入部員だ」
『…えっ入部テストは………あぁ、剣城…ですか』

俺の言葉に、監督は無言で頷いた。


「名簿に名前を。あと、ユニフォームを出してやれ」

『一応聞きますけど、入部テストは』

「免除だ」

『ユニフォームはファーストチームの、ですよね』

「ああ」

『…わかりました、準備します』

「今日の朝練から参加するそうだ。以上」

『ありがとうございます!』

軽く頭を下げると、昨日の剣城とのやりとりが頭を過ぎった。


―――『監督はどうなる』
―――「排除、だな」
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