俺たちは走り続ける

□この二歩は縮めさせない
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『………俺は、雷門サッカー部マネージャー・2年の神原涼だ』

俺がフィフスセクターに課された当面の任務は、化身能力者の監視と久遠の排除、そしてもうひとつ―――


「マネージャー、だと?」
『あ?…あぁ』

―――2年、神原涼の監視。

「どういうことだ?」

マネージャーを監視、だと?訳が分からず、言葉が口をついて出る。

よっぽど凄い…それこそ、これから化身を出す可能性がある実力者なのだろうと踏んでいたが。

『はぁ?』

訳がわからないのは向こうも同じなようで、不自然な沈黙が生まれる。


『どうも、こうも……サッカーは好きだが俺は生まれつき体が弱くてな』

口を開いた神原は、俺の問いを
「どうしてマネージャーをやっているのか」
というものにとったらしい。

「………」
『だからマネージャーなんかやってる。…悪かったな!』

体が、弱い。
神原がこともなげに言ったその言葉は、俺の頭に響いて重くのしかかった。

脳裏に映るのは、

「……」
『?』

兄さんの、笑顔。

『剣城…?』
「あ、あぁ」

駄目だ、感傷的になるのはやめろ。

『…大丈夫か?なんかお前…』

泣いてたって仕方が無い。兄さんの足を治すために、俺は………!
自分に言い聞かせるように心の中から兄さんの笑顔を追いやる。

「……」

落ち着け。今は雷門中の奴の前だ。

『ん?』
「……なんだよ」

やっと脳みそが正常に動き出す。

グッと睨んで威嚇しようとしたが、神原はお構いなしに不思議そうな顔で俺の顔をじろじろ見てくる。


『いや……あれ?』

何を言い出すのか全く予想も出来ず、マネージャーであるにもかかわらず
フィフスにこいつの監視を命じられた事を思い出す。

『なぁ、お前…』

相手の得体の知れなさに、じわりと焦りが生まれる。

「何だよ」

声は揺れなかっただろうか。
顔は平静を装えているだろうか。

緊張感が高まる中、神原は言った。


『俺とどっかで会ったことないか?』
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