俺たちは走り続ける
□心配事が多すぎて
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「俺たち、どうなるんだろうな」
霧野はぽつりと呟いた。
「自由にのびのびサッカーをするって、そんなにいけないことなのか?」
それを、俺は黙って聞いていた。
「こんなに努力してるってのに、まだ足りないのか?」
どんどん早くなる口調はだんだん熱を帯び始める。
「どうしてこんなことになるんだ?!なぁなんでだよ!」
霧野の膝の上の握り拳には力が入っていた。
「あんなやつらのために、どうして俺達が苦しまなきゃいけないんだ?
一体どれだけ傷つけば、こいつは…!」
『霧野…』
ふっと力を抜いた霧野は、気の抜けたような明るい声で言った。
「俺は、こいつが楽しそうにサッカーをしているところが好きなんだよ」
『あぁ』
俺は短く返事をすると、安らかに寝息をたてる神童を見た。
再び沈黙が俺たちを包む。
『……大丈夫さ、お前らなら』
俺はそう呟くと、椅子を立ち上がり、後ろの窓の外を見た。
『お前らなら、きっと打ち勝てる。俺はそう信じてる』
「お前…」
霧野が何か言おうとしたが、それを遮るように俺は霧野を振り返って言った。
『俺たち、今から旧部室の後片付けするからさ!』
霧野は俺の顔を、戸惑ったような複雑な顔で見ていた。
『神童が起きて、大丈夫そうだったら来てくれよ』
んじゃ、と言って俺は保健室を後にした。