俺たちは走り続ける
□これが化身だ!A
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「お前だって、サッカーが強いから、この雷門に来たんだろ」
「…え、強いから?い、いえ!違います!
俺、雷門でサッカーするの、ずっと憧れていたんです!」
言い返す松風の顔は真剣で、目はどこまでも真っ直ぐで。
俺は、目を細めずにはいられなかった。
「憧れか……」
そう呟く神童の顔は、一瞬だけ懐かしいとでも言いたげな悲しい笑顔に見えた。
「そんなことを言っているのはお前だけだ」
しかし、そう言い放った神童は険しい顔をしていた。
「……」
唖然とした表情の松風は、何も言い返せない。
「結果が全てさ。サッカーが弱ければ、価値の無いものとみなされる!」
『まぁその事態を救済するために作られたのが、サッカー管理組織フィフスセクターってわけだ』
俺たちの会話を聞いていた音無先生が呟いた。
「いくらフィフスセクターでもここまでするなんて…」
それに久遠監督が言葉を返す。
「管理と言う名の元に、勝敗すらも意のままにする。逆らえば報復が待っている」
どんどん不安そうな顔をする天馬に、苦笑しながら俺も説明を続ける。
『今じゃ、各学校のチーム構成から選手の育成まで、ほんとに“全て”を管理するようになった』
「円堂さんたちとやってきた、あの熱かったサッカーを取り戻す事は出来ないんでしょうか…」
「最早、これはサッカーではない。
サッカーは、支配されてしまったのだ」
「これがサッカー…そんな………」
松風の目に映るもの。
理不尽に耐え、それを受け入れているチームメイト。
意気消沈の彼らの表情は、皆サッカーをやっているとは思えないほど一様に暗い。
「だけどな、偶にはまともな試合だってあるんだ。
そんなときは、思いっきりサッカーが出来る」
その神童の呟きを、松風がどう取ったのかは表情からは分からないまま、休憩時間の終わりを告げる笛が鳴った。